米国旅客航空会社に勤務する副操縦士、裕坊です。
4年ごとに改選されるアメリカ合衆国の大統領。先日20日、2期目の大統領に正式に就任したトランプ氏。
就任初日から大統領令に100近くの署名をするなど、早速職務を積極的に遂行していたのは、ニュースでも大々的に取り上げられておりました。
実は航空業界を取り巻く領域にも既に影響は及んでいて、運輸保安庁(TSA:Transportation Security Administration)の長官だったデビッド・ペコースキー氏は大統領就任初日にいきなり解雇通知。
バイデン政権色の完全一掃に奔走するトランプ氏からの解雇通告を予期してか、
こちら連邦航空局長官のマイク・ウィトカー氏は自ら辞任することを決意するに至っています。ウィトカー氏の長官職就任は2023年10月末でしたので、航空局長官としてはわずか1年3ヶ月の在籍でした。
1月といえば、通常は降雪量が1年でも最も多い時期。ただこの冬のデトロイト地域、積雪を記録する日数こそそれなりに多いものの、積雪量全体としては落ち着いた状態が続いています。
こちらは先日の様子。1晩で数十センチの積雪を記録することも珍しくないデトロイト地方ですが、
この時の積雪もせいぜい3センチほどで、
雪かきの作業も20分とかかりませんでした。
黒の我が家のミニバン。車だと少々雪が付着していても、道路を走るのに何の問題もありませんが、
航空機はこうなってしまうと、安全に離陸をすることはできません…
航空機の場合、航空力学的に主翼、尾翼だけでなく、胴体も雪や氷が付着していない状態で飛行することを前提とした設計がされています。
エンジンに付着した場合、推力低下などを起こすことは極めて稀ですが、重量は間違いなく増すので、除雪除氷は必須になります。
ですので、雪雲を通り抜けて到着した際などは、折り返し便出発前に入念に主翼上面などを点検することが欠かせません。
機体の除雪除氷作業が行われるのは、出発前、そして一部の例外を除いては搭乗終了後。
除雪除氷、防氷には多くの場合、プロピレングリコールを主成分とした液体が使用されます。用途ごとに分類され、色で判別ができる仕組みになっています。
通常雪や氷などを振り払うのに使われるのは、オレンジ色の除氷液。約60度前後にまで温められた上で使用されます。プロピレングリコールの融点はマイナス59度なので、マイナス30度を下回るような厳しい条件下でも使用可能なのが特徴。
積雪が続く場合は、離陸前の主翼、尾翼への積雪を防ぐために、緑色の液体で保護用の膜を作ります。これが通称、防氷と呼ばれる作業。
純度100%で粘性が非常に高く、一定の時間、機体の金属に付着します。そして離陸時に空力的に払い落として、主翼上に積もりかけた雪を払い落とす仕組み。気象条件によって耐性の時間は大きく左右されますが、それほど激しくない降雪だと1時間以上の耐性があります。こちらも液体成分はプロピレングリコール。少量ですと人体への毒性は低いのですが、環境負荷はゼロではありません。特に生態系への影響が大きいので、排液は専用の排水口を使用します。
発着の多い都市空港では、除氷作業に使用される専用の作業場というのがあり、除雪除氷液、防氷液対応の専用排水口が備えられています。デトロイト空港を例にとると、
紫色で囲んでいる駐機場が、デルタ航空が使用する除氷作業用の駐機区域になります。英語ではディアイス・パッド(Deice pad)。ちなみに緑色の区域は他社用。
細かく観察すると、各作業場とも5機ほどが並行して駐機できる仕組みになっていて、一度に数機の除雪除氷作業が可能になります。
こちらはシカゴ・オヘア空港の見取り図。空港のほぼ中心部に大きな旅客ターミナルが立ち並んでいます。オヘア空港では除雪除氷作業の大幅な効率向上を目指して、専用の作業場が最近になって完成しました。旅客ターミナルから西に位置する紫色の枠で囲んだ区域がそれ。
国内線用の中型、小型機材ですと最大で一度に20機を捌けるという大容量。
そしてこちらがデルタ航空のお膝元、アトランタ空港。かつては現在のFコンコースがある立地に作業場が存在したのですが、
実を言いますと、現在のアトランタ空港には専用の除雪除氷作業場というのがなく…
滑走路と並行する誘導路が、除雪除氷の作業に使用されます。
拡大してみると、並列式ではなく…
直列式…
5機ほどの飛行機を縦一列に並べた上で作業が行われます。
このやり方だと前方の機体の作業が終わるまで、後ろに並んでいる機体が動けないので、作業効率は必ずしも上がらないのですが、
降雪が中西部に比べても少なく、除雪除氷の作業が必要となる日数も少ないので、専用の作業場がないのも致し方ありません…
実はこの冬、たびたび暴風雪に見舞われているアトランタ。先日1月9日から10日にかけては最大10センチほどの積雪がありました。子供たちはさぞかし楽しかったことでしょうが、3日間でデルタ航空便は1,638便が欠航…
先日になってさらに次の暴風雪に見舞われ…
またも大量の欠航便を出したしまったようでした…
2月に改めてお目にかかります。