Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊日記(12月17日)

米国航空会社、小型旅客機担当、裕坊といいます。

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12月は小刻みに3日勤務へ出勤しては、1日、2日のお休みをいただいて、再び出勤のパターンを繰り返しています。

 

短距離路線の担当が多いボーイング717型機。

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デルタ航空では2022年12月現在、ボーイング717デトロイト空港もしくはアトランタ空港からの近距離路線がほとんどで、乗務員は平均で1日当たり3便を担当しています。

 

前回の出勤は3日勤務。デトロイトからバッファローへの往復便がまずは担当だったのですが、装備品のうちの1つが故障……

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ボーイング717型機の副操縦席からの光景。

 

右側の操縦席に座る副操縦士席と左側機長席の間には、こんなコンソールがあり、

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スロットルレバーなどは、ここに取り付けられています。

 

ちょうどスロットルレバーの下辺りにあるのが、航空管制塔との無線交信用の装置。周波数はダイヤル式で調整します。
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周波数を示す液晶式のランプが故障して、点灯しなくなっていました。あまり大した故障ではないようにも受け取れるのですが……

 

応援に駆けつけてくれた整備員さんによると…

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無線装置だけでなく、スロットルレバーを覆うコンソールの周辺というのは、

 

実は電気の線がたくさん張り巡らされている箇所の1つらしく…
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配線の異常の特定が重要で、原因を探っての修理が必要になると告げられました…

 

ここで稼働していない機体が1機でもあれば、そちらに単純に乗り換えて目的地へと向かうことが可能だったのですが…

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各機材とも稼働率がほぼ最大になっている、ここ最近のアメリカの航空会社。

 

乗り換え可能な機体など、どこにも存在せず…
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次々に他の出発便が目的地へと向かうのを横目に見ながら、修理が終わるのをひたすら待ちぼうけ…

 

結局B717の修理は間に合わず、機材がエアバス319型機へと変更。出発ゲートも変更になって、お客様たちは新しい出発ゲートへと移動して行きました…
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ちなみにエアバス319型機とは、こんな形をしています。B717とは見た目も中身も全く違う、ザ・エアバス機の代表機の1つ。

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では裕坊が、いざこの機材を操縦できるのか、と問われると……その答えは……

 

 

ノー…

 

 

ジェット機の操縦に当たっては、パイロットの資格の他に機種限定免許(タイプレイティングとも呼ばれます)というのが必要になり、航空会社ではシミュレーターなどを使って、機種ごとの訓練を行います。

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エアバス機担当のパイロットは、エアバス機専用の訓練が課される仕組み…

 

ちなみに、これがエアバス319型機のコックピット。

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ジェット機の作りというのはどれもよく似ていて、使用される各装備品の仕組みはどれも似たものなのですが、機種ごとにスイッチ類、ボタン類の位置などが全く違っているので、各機材専用の訓練が必要になるのです。

 

シミュレーターでの訓練を約1ヶ月ほど受け審査に合格すると、ライセンスの付帯事項に記載されます。

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こちらが連邦航空局発行のライセンス。

 

裏面に付帯事項欄があり、青で囲まれている部分が操縦が認可された機種の記載箇所。
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裕坊はリージョナルジェット機であるCL-65とDC-9の記載の2機種の限定を所持しています。一度記載されると、それが消去されることはありません。では裕坊が仮に過去エアバス機の機種限定を受けていたとしたら、エアバス機で運航される代替便を操縦できたのかといえば………

 

 

またしても、その答えはノー……

 

 

それは一度に運航可能な機種は、1つに限られるから…

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チャーター機運航会社(連邦航空法 第135条)などですと、複数の機種を一度に担当することも法律上許可されていますが、

 

アメリカにおける旅客航空会社(連邦航空法 第121条)は、一度に担当できる機種は1つのみ…仮に機種限定を保持していても、新たな機材の訓練が終わると、以前担当していた機種の操縦資格は一時喪失する仕組み…
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しかも教官資格などを有する飛行教官、試験官などを除いては、機長席、副操縦士席など、着席できる席までが限定されます。

 

ですので一度担当機材が変更になると、運航が可能なパイロットを呼び寄せないといけません…
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大手の航空会社は地域航空会社と違い、短時間で呼び出し可能な乗務員の数が限られているので、この日も休暇中へのパイロットの声かけからどうやら始まっていたのでしょう…

 

お客様はひたすら乗務員が姿を見せるのを待ち続け……

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定刻3時50分発のところ、午後9時34分まで待った上で……

 

皆さんお疲れの表情を浮かべながら、やっとのことで目的地へと向かって行きました…

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サウスウェスト航空のように、保有機種を1つに統一している会社であれば、代替の乗務員を探すのは大手よりは比較的容易…
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我が社のように、国内線機材だけでも複数を抱える会社ならではのあるあるでした…

 

裕坊たちは、結局担当便は1つだけになり、当日の夜はセントルイスへ到着。

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翌日はニューアーク空港を訪れ、

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最終日の3日目は、夜8時過ぎにデトロイトへと到着…
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今回のお休みは2日間…

 

 

 

 

 

 

次は4日勤務です。