アメリカの国内線を中心に、小型機に乗る裕坊と申します。こんにちは。
昨日水曜日のお昼過ぎから4日間のフライトへと出ています。初日の宿泊滞在先になったのは、別名をチェリーキャピタル(Cherry Capital)とも呼ばれる、トランバースシティ。その名の通り、さくらんぼの生産地。
ただミシガン州で生産されるさくらんぼは、厳密にはスミミザクラらしく、酸味が強くて本来は料理用に使われるらしいです。
スミミザクラの生産量では、ミシガン州は他州を圧倒していて、年間生産量が80万トン。
ちなみに一般にさくらんぼと呼ばれる品種とは、セイヨウミザクラを指すらしく、アメリカでの生産量が圧倒的に多いのは、シアトルがある西海岸側のワシントン州。そのワシントン州で生産されるレイニアーと呼ばれる品種は、裕坊のお気に入り。
山形産のさくらんぼに色がとてもよく似ていて、甘いだけでなく、程よい酸味があるのが特徴。時期がかなり限られていて、ミシガン州のスーパーですと、6月の中旬ごろから店頭に並び、7月の中旬には終わってしまう季節限定……アメリカのスーパーですと、イチゴやリンゴ、ブドウなどの果物は年中買えるようになったのですが、さくらんぼは季節が未だに限られています。
トラバースシティでは、毎年アメリカの独立記念日(7月4日)に、チェリーフェスティバルと呼ばれる季節の催し物があるのですが、今年はコロナウィルスの影響で中止となってしまいました。
例年ですと、多くの露店や様々な品種のさくらんぼが並んで、観光客も多く訪れるのですが、今年の独立記念日はかなり閑散としていたらしいです……
トラバースシティ近郊には、いくつか観光の目玉があって、その一つに、ミシガン湖沿いにあるスリーピングベアーと呼ばれる砂丘があります。
水が澄んでいるので、とても絵になりますし、ミシガン州側からだと湖を西に拝むことになるので、晴れた日の夕日が絶景。
またグランドトラバース湾沿いにある2本ある半島を北へと上がっていくと、両半島で合計で40ものワイナリーがあります。
トラバースシティでのオススメは、白ワインで、ドイツから持ち込まれたというリースリングのワインでも有名。
ちなみに裕坊は、全くといっていいほどお酒を飲まない人なのですが、
トラバースシティ産のリースリングワインは、美味しくいただきます。それでも、本当にごくたまにですが……
癖が全くなく、白ブドウジュースを飲んでいるような感覚で飲めるのが特徴。辛口が好きな方には、ちょっと物足りないかも知れません。ミシガン州にお住まいであれば、ほとんどどこのスーパーでも手に入ります。
2日目の今日木曜日は夕方ゆっくりの出発だった上に、お天気は雲ひとつない快晴…
本当ならレンタカーでも借りて砂丘に行ってもよかったのですが、ここ最近フライト詰めになっているので、今日はホテルにてのんびりした上で出発しました…
昨日トラバースシティへとやってくる時には、
この季節の風物詩、積乱雲が寄りにも寄って、ちょうど裕坊が担当する便が到着する時間帯になって、空港の上にどっかりと腰を下ろし……
着陸態勢に入って右往左往することおよそ30分。ひたすら着陸のチャンスを窺って、上空を彷徨っておりました……
アメリカは広大な土地があちこちに残っていて、積乱雲が上がる条件がいくつも揃っているので、
この季節は操縦席のパネルに浮かび上がるレーダー画面を見ながら、千鳥足で入道雲を避けることは稀ではありません……
定刻の到着時刻が10時15分のところ、実際の到着時刻は10時42分でした……
トラバースシティ空港のような地方の空港へと行くと、設備的にどうしても滑走路への進入方法も限られ、昨晩はそれも足枷になって着陸が遅れることに……
デトロイトやニューヨーク、シカゴなどの大都市の主要な空港ともなると、雲底が低かったり視程が低かったりして滑走路が上空から視認できない時は、各滑走路ごとでILS(Instrument Landing System)と呼ばれる地上からの電波を頼りに、地上からおよそ60メートルほどの高さまで雲の中に入った状態のまま近づけます。横方向と縦方向にそれぞれ電波が出ていて、飛行機がそれを頼りに滑走路へと近づく仕組み。
ちなみにこのILSという滑走路進入装置を使うと、飛行機が最新の計器誘導装置を装備していれば、視程が完全にゼロの状態でも着陸ができます。最近のエアバス製の旅客機であれば、ほぼ標準装備。
ところが地方の空港へ行くと、滑走路によってはILSが装備されていないことも……一方向にはILSが装備してあって、もう一方の方向にはILSが装備されていないこともザラ……
そんな時は、最近ですと、車のナビの標準にもなっているGPSを使って滑走路へと入ることが多いです。
ただ衛星からの距離を計算した上で自機の位置を把握する仕組みなので、誤差が出るのは避けられません……大抵は地上からの電波で補正をし、位置情報の精度を上げる仕組みにはなっているのですが、その補正の精度によってはILSほどには滑走路へと近づけないことも……
昨晩はILSが装備になっている滑走路への進入経路には、入道雲が立ちはだかって使うことができず、
迂回をした上で、反対側からGPSを使った滑走路への進入を試みて……
本来であれば雲を突き抜けるとこんな感じで、滑走路が視界に入ってくるのですが……
昨日は滑走路が全く視認できず、着陸やり直しとなりました……
結局は雲が立ち去るのを待った上で、反対方向からILSを使っての着陸……
30分遅れての到着となり、客室乗務員たちの足取りも重そうでした……
ただGPSは自機の位置情報を、その場その場で計算することができるので、
将来的には下の右の図のように、障害物を避けられる曲線を辿りながら目的地へと辿り着くことも可能になります。
大きな可能性を秘めているGPS航法。航空界では、1番精度が高いGPSによる航法は、RNP(Required Navigation Performance)と呼ばれていて、
サンフランシスコやロサンゼルス近郊のオレンジカウンティ空港など、空域が限られる空港などでは既に活用が始まっているところもあります。
運航便の絶対数が少ないので、トラバースシティでの運用は相当先になるかも知れませんが……将来的には、各空港の周辺障害物などのデータを積んでおいて、気象状況によってその時に最適な滑走路への進入経路をその場で描き出して、滑走路へと入るということも可能になるかも知れません。人工知能を駆使すれば、十分今後は可能になるのではないでしょうか。
今日は2便を担当して、メイン州のポートランドにてフライトを終えました。
明日も今日と似たようなパターンで、2便の担当の予定です。