アメリカの小型機専門航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。
コロナウィルスの影響を、深刻なレベルにまで受けているアメリカの航空業界。アメリカの航空会社は株主配当を最優先してきたことが影響して、内部留保が元々極端に少なく、手持ち現金は枯渇しかかって各航空会社とも青色吐息……ただここ最近の減収は、経営努力でどうにかなるレベルを完全に超えてしまってはいますが……
そんな中、昨日5月12日(火)には、アメリカでは新たなコロナウィルス緊急助成金の草案が提案されました。第1回目の助成金がCares Act(Coronavirus Aid, Relief and Economy Security Act)と呼ばれたのに対し,第2回目はHeroes Act 2020(the Health and Economic Recovery Omnibus Emergency Solutions Act)と呼ばれます。1回目のCares Actが2兆ドル(日本円で約220兆円)だったのに対し,Heroes Actでは3兆ドル(330兆円)を準備したいとのこと。
提案を発表したのは,民主党議員で合衆国連邦議会の下院議長、ナンシー・ペロシ氏。ただ連邦議会では上院が、共和党によって過半数を占められており、その内容はどうやら手が加えられる可能性が大きいそうです。
共和党はトランプ大統領同様、各州、各自治体の外出規制の解除、撤廃へと向けて動いていて、一度経済が動き出せば収入を得られる人が多くなるため、助成金は民主党の草案ほどには必要ない、というのが共和党の立場……
(写真は、共和党上院多数党院内総務、ミッチ・マコーネル氏)
ただ共和党でも、1回目の助成金額では到底経済を再生するには十分な金額とは言えないという意見を持つ議員が多く、2回目の助成金給付が必要となる点では一致しているようで、あとはどこが落とし所になるのか、というところになるでしょう。
草案通りに可決されたとなると、17歳以上で一定の条件を満たすアメリカ納税者に対し、1人当たり上限2,000ドルの給付を、最大で1年間に渡って支給、ということになるそうです。
あと2回目の助成金には、医療機関や疫病研究所などへの助成金なども、明文化されているのが特徴。コロナウィルス感染者の治療を行う医療機関への助成金が、合計で1,000億ドル、PCR検査並びに感染追跡に750億ドル、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institute of Health)へ47億ドル、アメリカ疾病予防管理センター(CDC:Centers for Disease and Prevention)へ21億ドル、などなど……
157億ドルが公共交通機関向けの助成金として、草案には盛り込まれていますが、このうちのどれだけが航空会社への給付金となるかは、明文化された文書を見つけることは、現段階ではできませんでした。まずはこのHeroes Actがどのような形で決着するのか、注目しておきたいと思います。
今日の裕坊は、お昼からお買い物…日本食用の食材が切れかけていたので、向かったのは我が家から20分ほど北へと上がった、日本人家族が皆さんお世話になっている、スーパーマーケットだったのですが…
実は着いた先で、こんな飛行機の編隊を見ることができました。
コロナウィルスの治療の最前線で日夜活躍している医療機関と医療従事者への敬意を込めて、米空軍や沿岸警備隊、国境警備隊の軍用機が、各病院の上空を通過する催し物。各州で行われており、ミシガン州では、ミシガン・ストロング・フライオーバー(Michigan Strong Flyover)と呼ばれています。
昨日12日(火)は、ミシガン州中央部から出発して、州の西側のグランドラピッズなどを経由して、デトロイトのダウンタウンへと向かうルート。
ブルーエンジェルスによる上空通過だったらしく、
地上からこんな感じの通過が拝めるか、と期待して、時間に合わせてお散歩に出かけましたが……
待てど暮らせど、飛行機は姿を見せず……
今日のお買い物ついでに、やっと編隊を見ることができました。
先頭を飛んでいたのは、空中給油機のKC−135型機。
かつてパンナムなどで活躍した、ボーイング707型機とほぼ同型機です。
エンジン効率をよくするために、最新型のターボファンエンジンを積んでいますので、騒音は初期型と比べると比較にならないくらいに、静かな機体になっています。今日もビックリするくらいに、静かに上空を飛んでおりました。
元々旅客機として開発された機体を、軍用に転用した機体ですので、コックピットのレイアウト自体は旅客機そのもの……
裕坊が今まで同乗した副操縦士の中に、このKC−135型機に搭乗していたという元沿岸警備隊所属のパイロットが1名いるのですが、彼の話がとにかく面白い…
元々はソビエト連邦との冷戦に備えて急開発された機体で、エンジンの燃焼室に吹き込む気体の見た目の体積を上げるために、初期型のエンジンでは水滴をエンジン内に噴霧していたとか、核攻撃を受けて電子機器が使えなくなった場合に備え、空に広がる星座を頼りに方角を定めるために、かつてはナビゲーターが乗務していたり、とエピソードには事欠かない機体だったそうです。
最近では操縦室のグラスコックピット化も進んでいて、既に全機とも最新型のグラスコックピットに置き換わったんだそうです。
操縦特性自体は、元々が旅客機用だったこともあり、とても素直なんだとか……
今日の飛行編隊の空中給油機を追っていた後続機は、
A−10サンダーボルトIIという、戦車や装甲車などを攻撃できる能力を持つ、単座の近接航空支援の機体でした。ただ肉眼で見た時にすぐに判別ができず、しばらく時間をかけてやっと答えに辿り着きました。音速の戦闘機では遂行するのが困難な、近接の航空支援の必要性から開発された機体だったらしいです。
KC−135型機と同じく、冷戦時の機体……元々かなり頑丈に作られていた機体だったようで、最近になって耐用年数が大幅に延長され、1993年に生産が終了した機体でありながら、かなりの数が現役で残っているようです。イスラム国攻撃時の戦果が著しかったのだとか。
最低でも2030年代まで、運用延長が決まっています。軍事費削減も影響しているのでしょうが……まだまだお目にかかる機会がある機体になりそうです。
あと2日お休みをいただいて、土曜日に出勤の予定です。