米国リージョナル航空会社操縦士の、裕坊といいます。こんにちは。
リージョナル航空会社の役割といえば、地方都市からの各航空会社の主要基幹空港へとお客様をお届けするのが中心。
今日土曜日の担当便は、シーフードで有名なメイン州ポートランドからの、デルタ航空コード下での本日唯一のフライトでした。
行き先はデトロイト。メイン州ポートランドからは、平常時ですとアトランタ行きが2便で客席供給数は300席、ニューヨーク(ラガーディア空港、ケネディ空港)行きが6便で合計400席、デトロイト行きが3便で200席。合計で計900席。アメリカでは土曜日の移動客が、午後になるとかなり減るので、3時以降は地方都市線は大抵運休。それでも座席供給数は合計で600ほど。
今日は座席供給数は76……搭乗してこられたお客様は、合計で10名でした……
デルタ航空のチケットをお持ちになってポートランドから移動されたお客様は、結局10名のみ………
航空会社によっては、運航そのものがなかったのか、駐機場にはユナイテッド系列のリージョナルジェット機が1機止まっているのが、遠くに見えるだけでした……
普段はサウスウエスト航空やジェットブルー航空などの機体を見かけるのですが、今日は見当たらず……
それを反映するかのように、空港の出発口は閑散……
搭乗手続きカウンターにも乗客の方の姿は見当たらず……
保安検査場を過ぎるのも、我々乗務員だけ……
10名のお客様を乗せて出発し、
メイン州ポートランドからデトロイトまで。途中、ニューヨーク州のサラキュース上空を通過します。
この辺りには、フィンガーレイクスと呼ばれる、指の形をした南北に伸びる細長い湖がいくつも伸びていて、
その周りには渓谷があったり、ワイン畑があったりと観光地としても有名。
デトロイト到着……
今日は裕坊が乗ってきた機体は、減便の影響で午後の営業便の予定が入っておらず、次のフライトは月曜日までお預け……
お役ご免で、電源を完全に落とした状態で、飛行機を後にしました……
お客様も10名だけでしたので、お客様が降りるのもあっという間……
州外へと飛行機通勤で帰宅する副操縦士を見送って、最後に飛行機に残ったのは、裕坊1人……
土曜日の午後は、平常時でも元々地方路線は運航便数が減るので、ターミナルは閑散とするのですが……
今日はBコンコースの化粧室の一部が閉鎖されるくらいに、閑散としておりました。
BコンコースからAコンコースへと向かうトンネルへ繋がるエスカレーター。
今日は4本あるうちの2本が閉鎖……
従業員専用の駐車場も、ガラン………
土曜日のお昼過ぎの帰宅……またしばらく自宅待機へと入ることになりました……
そして我が家へと帰ってくると、最近自らの寝室に机を持ち込んだ息子くんが、インターネットを使って勉強中。既に裕坊が住むミシガン州では、今年度(2019−2020年度)一杯の学校の休校が決定しているので、できることといえば自習くらい……それをお手伝いするように、各教科の先生がオンラインミーティングなどを開いては、生徒たちに学習のアドバイスなどをやっているようです。
ただあくまでもやっているのは、ミーティング。実はオンライン学習を基本とする教育要項は、まだ裕坊が住んでいるミシガン州では定められておらず、それが障壁となって正式に授業としては開講していないのが実状……
大学などでは、次々とオンラインによる授業が開始されているようですが……
最近の大学生ともなると、ほとんどが各自ノートパソコンやタブレットなどを持参していますから、
オンラインへと移行する障壁が少なかったのでしょう……
高校生ならまだしも、小学生ともなるとスマホやタブレットを触ったことはあっても、家庭の方針や事情などからパソコンやタブレットを自分で自由には使えないでしょうし、まだまだ障壁が多いのが実状……
休校せざるを得ない事情があったとしても、簡単にオンライン授業を始められる、というわけにはいかないようです。特にミシガン州の場合、デトロイトのダウンタウン付近になると連邦政府の定める貧困層に相当する家庭も点在し、家庭によってはインターネットすら引けていなかったりなど……仮に法整備が進んだとしても、オンライン授業を始められるようになるには、かなりの初期投資が必要になってくるでしょう……
我が航空会社でも、莫大な額の予算が投じられて、やっとのことでオンラインによる管理が可能になりました……
現在では、1枚のタブレットで全てが通信されるようになり、個人ごとのスケジュールなどもそこで確認ができるようになっていますので、現在のような状況下でも慌てずに済んでいます。
それまではパイロットが持ち歩く看板アイテムだった、パイロットケースを持ち歩いておりました……
中を開けてみると、5冊にも6冊にもなる印刷されたマニュアルが入っていて……
それはそれは、けっこうな重量でした………
我がエンデバー航空では、2017年5月2日にタブレットへの完全移行が終了。
会社から連絡がある時は、個人宛のメッセージ、会社全体の連絡なども全て、会社専用のoutlookを通した連絡が行われています。
連邦航空局では、1枚のタブレットあたりの使用期限を3年と定めていますので、2017年から使っていたタブレットは新しい物へ置き換えられることになり、年明けと共に新しいタブレットが全パイロットに配布されました。今年から使用しているのは、iPad 10.2インチ画面(2019年度版)、WiFiプラス携帯電話会社による4G(LTE)通信機能付き、を使用しています。
新しい機能も加えられ、出発待機中に各オペレーションセンターへメッセージが直接送れるようになった他、各旅客便を管理する運航管理課の情報なども、直接入手できるようになりました。
操縦室内のコンピューターによる通信が切断された際に、すぐに連絡が取れますし、本当に助かっています。ただこちらの初期設備投資額、日本円にして、なんと約4億円……ほとんどジェット機が一機買えてしまいそうなほどのお値段……しかもこれは2,000名のパイロットに対しての初期投資額………
これが学校のオンライン学習へのインフラ整備の初期投資ともなると、恐らくコストも天文学的な数字………
ただ現在の状況のように、休校が長期に渡って必要になった場合に、教育を止めずに遂行できるなど、利用価値は大きいのではないでしょうか。個々の能力や進行具合に応じて、クラス分けを細かくできるなどのメリットもあります。通信設備やタブレット、コンピューター、オンライン授業で使える専門のアプリなどなど、インフラを整備するところから始めなくてはいけませんので、時間も予算もかかるでしょうが、コロナ禍のような事例が繰り返されたことを想定して、今後インフラが徐々に整備されていくことになるでしょう。
それに先駆けるように、今の高校生たちはコンピューターの機能を最大限に活用してしまいます。最近の息子くんの週末のお楽しみは、日本人同士でオンラインで集まっての、「人狼ゲーム」。
オンラインですと、近辺に住んでいる者だけでなく、日本からも参加可能。息子くんは「人狼ゲーム」をとことん研究し尽くしていて、その迫力のすごい事と来たら…………裕坊は諸事情からLINEが使えない環境にいますので、参加したくても参加ができないのですが……
参加できたとしても、ちょっと参加するのがコワイです………