Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊、一旦帰宅

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日は一本のフライトをこなしてゆっくり睡眠。今晩はまた愛妻ちゃんと息子くんに会える日。6日間連続とはいえ、最後の日を除いてはそれぞれの日はゆったりとしたスケジュールで、気分的にちょっとゆったりの裕坊。コーヒーが今朝はめちゃウマ。

一昨日の夕方になってほんの短時間に降った雪に、さすがのミシガン除雪隊も手を焼いたのでしょう。大雨のあとの大雪、しかもベチャ雪。道路事情がどうやら今一つよくなかったようで、朝になって少しずつ休校が発表になります。コタツで力尽きてそのまま寝ていた愛妻ちゃん、朝の4時過ぎには目もパッチリ。よく見ると液晶画面のバックライトが愛妻ちゃんの顔を照らしています。眉間にシワを寄せて真剣な眼差しで見入っているのは休校情報。ほぼ30秒おきに情報を更新。幼稚園が休園にならないか、心配で仕方がないのでしょう。

元々愛妻ちゃんの勤める幼稚園の学区は、他の学区に比べても休校に至るまでに時間がかかることで有名。皆熱心な先生ばかりで、生徒の顔を見たくて見たくてきっとウズウズしているに違いありません。ギリギリのギリギリまで決断を粘ります。そのうちに、ほんの少しその学区から離れた中学校に通う息子くんの学区は休校の発表。息子くん、これ幸いとばかりに二度寝に入ります。普段もこちらが起こさない限り、自らは決して起きてくることがない息子くん、中学生にして夜中を過ぎても起きていられる超がつく夜型人間。裕坊の息子であることを改めて実感。

6時を過ぎても休校が発表にならない幼稚園の学区。さすがに覚悟を固めていつものルーティンへと入る愛妻ちゃん。シャワーへと入っていきます。愛妻ちゃんのあとを継いで情報更新を受け継ぐ裕坊。休校情報がやっと出たの6時半。シャワーで愛妻ちゃん、ホッとした表情。眉間のシワがどこかへ消え失せていました。園児の顔が見られなくて残念かと思いきや、そっか、園児が家に安全でいられるから安心なんだね。さすが気の優しい愛妻ちゃん………

ゆっくりの朝食を済ませて、ほんのちょっと雪かき。昨夜のうちに大きなシャベルをフロントバンパーにつけたトラックが道路の雪かきを済ませてくれています。おかげで道路はとてもキレイ。そしてそのトラックのシャベルからこぼれた雪の塊がたっぷりと家の前に積まれています。仕事に行く前には、それを履かないといけません。水分をかなり含んでいて雪かき機は全く使い物にならないので、久しぶりにシャベルを取り出し、固まった雪を持ち上げようとすると…………………動かね〜…………

トラックにつけられたシャベルは前に進むにつれて、雪の塊を雪だるま方式に大きくします。そしてカーブに差し掛かると大きな塊がシャベルの横へとこぼれます。そして我が家はちょうどカーブの1番最後のところにくるので、トラックは毎回1番大きな塊を残していきます。普段裕坊があまり体を動かさないのをトラックの運転手もよく知っているに違いありません。膝の高さはある塊を我が家の前にいくつも積み上げて、鼻歌を歌いながら去っていきます。

いい運動です。塊を砕きます。いつも溜まるストレスをしっかり発散です。砕いてそれをシャベルでズルズルと引きずります。まだ外の気温は一桁台だというのに、しっかりといい汗をかきます。不摂生で重くなった体も軽くなります。仕事始めの景気付けにはもってこいです。

今日はデッドヘッド2本。操縦席に座ってフライトを直接担当するのは1本だけ。デトロイトからニューハンプシャー州マンチェスターまでのフライトが担当便。あとはお客さん。iPad片手にゆったりの1日です。

 

裕坊

裕坊、出勤

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日、ミシガン州デトロイト周辺は裕坊がブログの送信ボタンを押して数時間もしないうちに雨が雪に大変身。雪が消えてようやく春の訪れを感じるかと思いきや、お天道様は何を思ったか透明の雨粒をいきなり大粒のボタン雪へと変えてしまいました。1時間もしないうちに辺りはあっという間に銀世界。どうやら春の訪れの前の倉庫の大掃除、残っていた雪をハタキで払い出したようです。

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我が愛妻ちゃんは仕事帰りにミドルスクール、日本でいうところの中学校へと寄り、息子くんを拾い上げて帰ってきます。どうやら雨が雪に変わるタイミングがよくなかったようで、何ヶ所か交差点でブレーキが効きにくく、怖い思いをしたとのテキスト。実は飛行機も同じで、ある一定条件下だと飛行機は止まりにくくなります。

忘れもしない3年前の真冬の真っ只中。ミネアポリスからニューヨークのケネディ空港への担当。気象条件が悪く、デルタ航空本体ですらほぼ全便が欠航になる中、我がリージョナルジェット機、小さな鉛筆のような飛行機だけが遅れながらも運航となりました。当然のことながらどうしてもニューヨークに行きたい乗客でごった返す結果となり、76人定員に76名の乗客。さらに操縦席に1つ、客室乗務員がドリンクサービスを用意するギャレーにも1つ用意された観察者用の座席、ジャンプシートにも1人ずつが乗り、立錐の余地もない完全満席。

ケネディの気象情報に目をやるとFZRAとあります。このうちのRAとはRain、つまり雨。その前に着いた2文字。実はこれが曲者。ここにあるFZとはフリージングの略で、凍らせるという意味。このFZRA、フリージングレイン、雨氷という現象、液体の状態で降ってきた雨が地面や物に当たるとその途端氷に変身してしまうという厄介者なのです。しかも視界が極端に悪い日で着地直前まで滑走路が視認できない夜。

この日はカテゴリー2と呼ばれる操縦で滑走路へと進入して行きます。副操縦士が操縦桿を握り、その副操縦士は目の前の飛行機の計器とにらめっこ。速度や高さ、滑走路の中心線に合わせて滑走路に近づく作業などを全部計器を見ながら1人で担当。機長は滑走路付近に設置された滑走路への誘導灯や滑走路灯などが見えないか、窓の外に目を凝らします。

着地5秒前、飛行機の高度がギリギリ30メートルを切ったところで誘導灯が視界に入り、裕坊が操縦桿を握り、飛行機を着地させます。ただ夜の視界の極端に悪い状態で飛行機の着地姿勢が自分でなかなか把握出来ず、飛行機もすぐには着地せず、いつもより3秒ほど着地が遅れたというのはありましたが、いざ着地後ブレーキペダルを踏んでみると……………………ブレーキが効かない…………………………

このときは真面目に大手新聞の1面が頭をよぎりました。しかし既に逆噴射装置を作動させているので、ここから着陸を中止し再離陸することはできません。逆噴射装置が稼働した状態でそこから再離陸を試みると、エンジンの出力が上がるまでには最低でも5秒はかかります。時速250キロで滑走路上を動いていますから、下手をすると大事故は必至。ここはこのまま減速を最大限試みるより他に選択肢はありません。

ひたすら祈りました。逆噴射装置を最大限稼働。それだけが頼りでした。タイヤはほとんどグリップしていませんから、横風にもかなりの影響を受けてしまいます。完全向かい風で、しかも風速10メートルほどだったことも幸いしました。ギリギリ滑走路の端から30メートルほどのところで停止。滑走路の最先端を示す赤い一列の灯りが、ほんの目の前まで迫っていました。

元々お天気には敏感で、気象予報などもマメには確認していた裕坊ですが、その便以来さらにフリージングレインに極端に反応するようになったのは言うまでもありません。雨氷の怖さを思い知らされました。最近では航空気象情報には滑走路の状態を示すコードも一緒に記載されるようになり、滑走路の減速具合を計算で把握できるので決断には役立つようになりましたが、雨氷と聞くとどうしてもあの晩の一件を思い出してしまいます。

今日は道路事情が回復せず、デトロイト周辺の学校は軒並み休校。愛妻ちゃんも息子くんもつかの間のお休み。裕坊は夕方遅く6時ごろ我が家を出発。オハイオ州シンシナティへと1便だけを担当してきます。

 

裕坊

 

 

 

 

 

裕坊、準備開始

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

外は雨がシトシト。裕坊がお休みの世間一般にとっての平日は、いつも8時前にバタバタと出て行く愛妻ちゃんと息子くんとを見送ることで始まります。普段はお休み1日目はそのあと夏場ならソファの上に寝そべり、冬はコタツに潜って再充電開始。けれども昨日はだいぶ前から予約が入っていた歯医者さんへ。

詰め物が取れて虫歯がかなり進行し、ほとんど形がなくなっていた親知らずは先々月に抜歯。本来嫌味や小言の一言くらい言われても仕方ないくらい放置しておいたその横の奥歯にも虫歯がかなり進行していて、歯の裏側には大きな穴ボコ。穴の状態でどうにか持っていたのが、先週ついにさらに欠けて崩れてしまい、ギリギリの状態で何とか駆け込み。あともうちょっと遅れていたら抜歯になるところだった、と先生のお叱りの言葉をいただきました。

昨日虫歯を削って金属の詰め物の土台づくり。診察台の上に乗り、大口を開けたまま歯を触られること1時間半!裕坊も先生も頑張った。女性が経験する産みの苦しみってこんな感じなのか……と思わず脳裏をよぎるほどの大行脚!寝るヒマなどありません。

細かな作業が必要だったようで、大きな口を開けたままにするよう要求されます。最初の10分は取り敢えず楽勝。15分も経つとだんだんとアゴが疲れ始め、20分もするとアゴに力が入らなくなり、30分もする頃にはほとんど失神状態……裕坊的には精一杯開けているつもりでも全く開き方が足りなかったようで、先生の催促の声が響きます。もう限界なんだよ〜……

何度か休憩を入れてアゴを休めます。3分ほど休憩してまた大口開き。特に体を動かしているわけでもないのに、休憩を入れるたびに息が切れる裕坊。歯の治療ってこんなに大変だったんだ!麻酔のお陰で痛みはなし。途中からは先生がアゴを支えてくれて何とか乗り切りました。11時に受け付けをしてもらってからトイレ休憩を一度挟んで終わったのほぼ1時。お疲れ様でしたの声をかけられた時は、本当に解放された気分になりました。歯は大切にしないといけませんね。

ついでだからと愛妻ちゃんから頼まれていた食材を買いに、近くの日本食材店へと寄ります。いつも我が家が買っている食パンが今日は………ない……………………

行き掛けの駄賃で、お菓子類だけがカゴの中に山積みになり、あと裕坊の大好きなカップ焼きそばがその上に腰掛けます。食パンがない代わりに取りあえずロールパンを買っておこう。打算的な裕坊の言い訳の材料となるビニール袋を一袋片手に抱えて精算。裕坊のいつもなら休日1日目の午前8時に始まる再充電は、3時以降開始となりました。

今はキッチンのすぐ横にある洗濯機がガラガラと音を立てながら、裕坊の汗まみれの制服を綺麗にしてくれています。それを乾燥してアイロンかけて着替え類をカバンに詰めて、もう既に明日から始まる6日連続のフライトに裕坊の頭はイッパイ、イッパイ。お休みが終わるのは本当にあっという間です。

 

裕坊

 

 

裕坊、歯医者へ

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

昨日4日間のフライトを終えてデトロイトまで帰って来た裕坊、昨日は1日お腹がシクシクしてしまって、フライト中はずっと屈んだまま。正露丸ですら効果がないお腹の痛みには少しまいりました。体が冷えたのか、食べたものが何かよくなかったのか。ただトイレに走るほどではなかったのが不幸中の幸い。

ワシントン・ダレス空港からミネアポリスのフライトは2時間とちょっと。ミネアポリス空港に到着後、次のフライトまで4時間の待機。お昼を食べたり本を読んだりして時間をつぶします。タブレットに入れた野球ゲームをやったり、日記を書いたりも。この休憩中、お給料は一切出ません。いや、ほんのちょっとは出ます。お昼を食べるくらいのおこづかい(英語でPer diemと呼びます)は供給されます。1時間当たり1ドル80セント…………

出発前1時間くらいにゲートへと向かいます。フライトに必要な書類を受け取ります。まだお給料は出ません。搭乗が始まって客室乗務員が笑顔で乗客の皆さんを迎えます。まず最初はファーストクラスのお客様から。まだお給料出ません。搭乗が終わり、ゲート係員がやってきてお見送りのご挨拶。ボーディングブリッジを引きます。まだお給料出ません。

CRJは階段式の搭乗口。ボタンを押すとモーターが動いて、その搭乗口が上がり、レバーを引くことによって完全に閉まります。そこで操縦席に座っている裕坊が駐機ブレーキを解除。ここからです、お給料が支払われるの。実はフルタイムでありながらも、アメリカの航空会社のお給料は時給制。しかも搭乗口が閉まっている間だけがその対象。待っている間は一銭にもなりません。あ、いや1時間当たり1ドル80セント…………

ニューヨークのケネディ空港を出発してフィラデルフィアへお客さんを運ぶ便が入っていたとします。電車でも十分行ける距離。出発ゲートから到着ゲートまでの時間はせいぜい1時間。そのフライトを担当しましょう。操縦席の中はバタバタ。離陸直後から着陸準備。息つく暇もなく着陸。ゲートに到着して搭乗口が開きます。時計が止まります。お給料が支払われるのここまで。1時間のお給料。そこで4時間の待機が入ったとしましょう。その間払われるのは昼食代のみ。1時間1ドル80セント(この金額は会社によって違います)4時間で7ドル20セント……………

次にケネディ空港へと戻りましょう。フライトは合計でまたも1時間。ケネディ空港へ戻ってその日の業務完了。合計2時間分のお給料の1日。ケネディ空港には恐らく定刻出発時刻の1時間前には来ていますから、実質の拘束時間は7時間。実際に支払われるお給料は2時間のみ。仮に時給が30ドルだったとしても、実質の時給は下がります。この例でいくと8ドルくらい。

リージョナルは短距離線も多く、空港で次のフライトを待つ待機の時間も長くなる傾向があるので、実質のお給料は下がります。1時間のフライトを担当して2時間休憩、また1時間のフライトをこなして次また2時間待機、よくあります。拘束時間が平均で160時間くらいで、75時間分のお給料というのはザラ。これもザ・リージョナルの一幕です。

お腹は昨日に比べると、少しマシになりました。どうやらお医者さんに行く必要はなさそうです。でも歯医者さんへ行く必要があります。1ヶ月も前から予約を入れていたので、すっぽかすことはできません。すごく眠いのでコタツに潜って口を開けて寝ていたいのですが、ひとっ走り行く時間です。診察台に上がって口を開けてきます。多分診察台の上で寝ていると思います。

 

 

裕坊

 

裕坊、帰宅の日

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

ワシントン・ダレス空港近くのホテルで朝食をいただく裕坊。ホテルによっては朝食付き。カロリーたっぷり炭水化物たっぷり、コーヒー付きでしっかり目が覚めます。愛妻ちゃんと息子くんに会える日。モチベーションは最高潮。

昨日は早朝からいろいろあったザ・リージョナル第2章。宿泊していたホテルは中央が大きな吹き抜け式になっているかなり年代物の建物で、エレベーターを降りるとロビーまで少し迷路。客室乗務員のうちの1人が迷子になり、建物をグルリと一周してロビーまで。真っ青な顔で現れます。朝から汗をかいています。副操縦士のブレットくん、迷路で迷子にはなりません。けれどもお財布を忘れています。真っ青になって部屋に戻ります。3分とかからずロビーに戻ってきました。いい汗をかいています。みんな運動大好きですね。

ホテルの送迎シャトルは運転席を含めて12人乗り。我がリージョナルクルー4人の他に2組の航空会社のクルーも空港へと向かいます。一般の宿泊客も既に2人がワゴンに乗っていて、これだと全員は乗れません。ホテルの要請で一般宿泊客にはタクシーで空港へと向かってもらうことに。かわいそうに荷物ごと降ろされてしまいました。数ヶ月前に似たようなことがありましたね。ビデオに撮られていたら、裕坊もCNN辺りに映ってしまったかも知れません。

11人のクルーに運転手が1人。後部座席は4人がけ。両側をアメリカ人に囲まれる裕坊。アメリカ人は運動大好き、筋肉を鍛えるの大好き、お腹を鍛えるのも大好き。大食い競争の練習は毎日欠かすことがありません。お腹はどんどん膨らみます。食糧危機になっても十分生き延びれそうなほどのエネルギーが詰まったお腹に両側を挟まれると、手すりもシートベルトもいりません。固定した位置に座って揺られること20分、空港に到着。

飛行機の電源を立ち上げます。飛行機にはビッシリと霜。除氷をしないといけません。霜だけですので普通なら10分ほどで作業は終わります。ミズーリ州スプリングフィールドは1日各社とも3便ほどしかフライトがありませんから、デルタの地上係員はユナイテッド航空向けのフライトも扱います。荷物を載せたり乗客の搭乗券発行なども彼らの仕事。暖気をしなければいけない除氷トラックはエンジンすらかかっていません。

ユナイテッドの乗客を乗せ終わった地上係員、やっとトラックのエンジンをかけ、暖気を始めます。定刻出発から20分。トラックが飛行機の周りをグルリと回りながら、除氷液をかけます。飛行機がきれいになります。霜が完全に除去されて安堵の表情を浮かべながら意気揚々と離陸滑走路へと向かう途中で、管制塔から連絡。「アトランタ行き、地上待機25分ね。滑走路の手前の駐機場に入っといて」………………この時点で定刻出発から既に1時間……………

駐機場に入ると、その横で草を食べるのに忙しそうにしていた牛さんたちが口を一休みさせて、裕坊たちにこう声をかけました。「ご苦労さ〜〜〜〜ん」

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(ちなみにこれ、滑走路横の本物の写真です。ネタでも何でもありません)

アトランタには40分遅れて到着。その後折り返しが40分ずつで組まれていた裕坊たちは、1日遅れを取り戻すことはありませんでした。ワシントン・ダレス行きのデッドヘッドまで乗り継ぎ35分。荷物を引きずって走ります。D42のゲートに到着し、B2まで走ります。裕坊も汗をかきました。いい運動になりました。ちなみに今まで汗をかいていなかった客室乗務員、仕事が延長になり彼女も汗をかきました。全員汗をかきました。ザ・リージョナル、第2章でした。

今日はミネアポリスへとフライト。地上で4時間待機し、オハイオ州クリーブランドを経由してデトロイトへと戻ります。

 

裕坊

 

裕坊、3日目

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

今日も早朝のお馴染みのコンビネーション。片手にチョコクロワッサン、片手にコーヒーカップ。で、手が空くとときどきキーボード。今朝もコーヒーは小さなカップのコーヒー豆の機械で沸かします。ちょっと幸せな気分に浸る裕坊。

天下のデルタ航空のお膝元で、昨日は1日で5本のフライトを担当。今日は3本……………まさにザ・リージョナル。アトランタからの場合、ニューヨークやボストンといった主要空港へと向かうフライトは全てデルタ航空本体の担当。大型機も忙しく離発着。76人乗りの鉛筆のように長細い飛行機は、アトランタからだと小さな街を行ったり来たり。人口10万人にも満たないようなお隣の町に飛ぶことも。

短距離が中心のスケジュールになると、担当便数増えます。5本、6本のフライトを普通にこなします。離陸してすぐ着陸の繰り返し。巡航のときのゆったり気分を味わうヒマはなし。飛行機壊れる確率増えます。パイロットも一緒に壊れます。昨日は燃料の温度を示すセンサーが故障。プッシュバックしたあとに警告灯が上がってきて、しばらく足止め。

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燃料系統のシステムのモニターを立ち上げます。左側のエンジンの燃料温度センサー、完全に故障。普段は温度を示すボックスの中に黄色の点線が3本。温度が分かりません。飛行機の燃料は大抵エンジンオイルの供給ラインの横を通ったり、油圧装置の横を通ったりして温められた上でエンジンに供給されるので、氷結することはほとんどありません。ただ故障部品として登録をしておく必要があります。連邦航空法に記載された事項、守らなくてはいけません。
スマホを取り、本社の整備課に電話。スマホは駐機場内で使うことを前提にしていないので、アンテナの数は多くありません。電波の状態よくないです。会話が途切れます。電波が細切れになります。その度に電話の向こうの整備員が放送禁止用語を口にします。いや会話はモニターされているので、放送禁止用語は実際には出てきません。それに引っかからない言い回しの同じ意味の表現が口から出てきます。明らかにイヤイヤな整備員が故障部品を登録してくれます。やっと滑走路へ向けて出発。30分登録のために時間がかかり、既に定刻到着予定から20分の遅れ。
複数のフライトをこなすときは、大抵折り返しの時間がギリギリでスケジュールが組まれます。遅れはなかなか取り戻せません。お客さんの表情は曇ります。主要空港で乗り継ぎのある乗客の眉間のシワが深く刻まれます。お腹を空かせた裕坊には、夕食を買うヒマはナシ…………

5本のフライトをこなしてやっとの思いで、最終目的地ミズーリ州スプリングフィールドへと到着。ルート66の発祥の地だそうです。耐用年数を超えたターミナルは完全に新しく建て替えられ、中はとても綺麗。ターミナルを通り抜け、ホテルの送迎シャトルを探します。タクシー乗り場には見当たりません。一般の送迎レーンへ踵を返します。見当たりません。仕方なくスマホを取り出した時に、お迎えに上がってくれました。やれやれ………………

空港の敷地を出ます。草原が見渡す限り続きます。他には目に入るものはありません。カラカラに乾いた草が延々と続く景色だけが広がります。各社1日数便ずつしかない空港の周りでホテルをいくつも建てても商売にはなりません。大きな都市なら5分も走ればホテルに辿り着きます。スプリングフィールドでは送迎シャトルは草原の中を5分走り、高速道路へと入ります。さらに高速を走ること10分。モールやレストランが見えて来てやっと到着。裕坊、電池切れで歩くのもやっと。

副操縦士のブレットくんは24歳。エネルギーが有り余ってます。通りの向かいのバーベキューのお店に行くそうです。ありえないです。190センチ以上の超大柄ブレットくん、多分本当に行ってます。どんな味だったか、聞いてみようと思います。

今朝は6時の便を担当。アトランタに戻った後は、アメリカ人すら知らない町イリノイ州クォードシティを往復し、デッドヘッドで向かうはワシントン・ダレス空港。ザ・リージョナル第2章です。

 

 

裕坊

裕坊、2日目

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマンです。

アトランタ空港に程近いホテルでいつものようにチョコクロワッサンをかじる裕坊。片手にはコーヒーカップ。最近はクリープのような小さな容器に入ったコーヒーの豆のカップをセットしてコーヒーを沸かすのが主流。ホテルにもそれが次々に導入になり、コーヒーの味も格段に向上しました。ほんのちょっと幸せな気分に浸る裕坊。

今日と明日はひたすらアトランタを行ったり来たり。CNNやコカコーラなどの世界の名だたる大企業も本社を置く、アメリカでも有数の大都市アトランタダウンタウンからおよそ10キロくらい南に位置するアトランタ空港は世界でも1、2を争う忙しい空港。年間の総旅客数が1億人、1日に平均するとおよそ26万人が利用、年間の発着便数が95万、1日平均の発着便数が2,500なんだそうです。……………………なんだかよくわからない数字が並びます。裕坊もよく分かりません。

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忙しい空港であることを実感するのは、朝空港へショーアップするとき。朝9時の便を担当するときは、8時15分までにゲートへとショーアップするのですが、アトランタはめちゃ時間がかかります。クルー専用レーンを使っても、ホテルを出発してゲートまで40分。クルーレーンを通れないときは1時間。規模の小さい田舎の空港だと8時にホテルを出発すれば8時10分にはゲートに到着。ここだと全てがスムーズに行って8時30分。ちょっと混むと8時45分。ホテルを7時半には出発しないと間に合いません。

送迎用シャトルに乗り込んでホテルを出発。空港までだいたい5分から10分ほど。シャトルを降りて、クルー専用セキュリティーまで、徒歩5分。IDを見せてターミナルの中に入ります。セキュリティーを通り、自分のフライトが出発するコンコースへと移動。地下鉄を目指します。地下に降りるエスカレーターは、朝はいつも大混雑。そして皆無言………ディズニーワールドへ向かう子供のはしゃぐ声だけが、エスカレーターに響き渡ります。

各コンコースをつなぐゴムタイヤ式の地下鉄の総延長は4.5キロ。電車が来るのを待ちます。地下には通路もあり、歩くことも可能。電車が止まってしまったら歩いて移動。お隣のコンコースであれば歩いた方が早いこともあります。健康のために歩く人も。長い時間座りっぱなしなることが多いパイロットたちは、重いカバンを引きずってよく歩きます。

セキュリティーのあるコンコースはT。そこからA、B、C、D、E、Fとコンコースは全部で7つ。それぞれのコンコースに地下鉄が停まっては乗客が忙しく乗り降り。コンコース内にはムービングウォークが全くない空港なので、エスカレーターを一旦上がると、あとは全て徒歩。もし出発ゲートがコンコースの端になると、コンコース内だけで徒歩5分。預け入れの荷物がある場合、さらに30分を加算。定刻出発時刻の3時間前くらいにはホテルを出るのが賢明です。冗談ではなく、ここはめちゃ時間がかかります。

ただパイロットの立場でいうと、シカゴ・オヘア空港と比較すると、飛行機の地上での移動が遥かにしやすい空港。写真で見ると分かりますが、アトランタは5本の平行滑走路。その滑走路とゲートとを結ぶ誘導路もほとんどが平行に作られているので、誘導路の構造がとても把握しやすいです。それに対してオヘア空港は……………………………知人の中にユナイテッドエクスプレスで機長やってるのがいます。シカゴ在住でシカゴ所属。ありえないです。尊敬以外に言葉が見つからないです。いずれオヘア空港に飛んだときにお見せします。

今日はここアトランタを出発しジョージア州サバンナを往復。そのあとはテネシー州のノックスビル往復。そして最後に目指すのがミズーリ州スプリングフィールド。5本を担当です。まさにザ・リージョナルの1日の始まりです。

 

 

裕坊