Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊日記(5月30日)

アメリカの中西部を中心に、小型旅客機に乗っている裕坊といいます。

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3週連続で続いている、5日勤務、2日休日のパターン。今週が3週目になりました。

 

木曜日に出発して、土曜日の晩からウェストバージニア州チャールストンで宿泊滞在しています。

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写真は、到着後のターミナル内。

 

振り返ってみると、病院の待合室と間違えてしまいそうなほど、こじんまり。
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最近、連邦政府からのグラントと呼ばれる資金援助を受けて、改築新装をする空港が多い中、昔の面影をそのままにしているチャールストン
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州全体が小高い丘の上に立つウェストバージニア州の、州都にもなります。

 

空港名は、チャック・イェーガー空港。
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ウェストバージニア出身の航空界における偉人の名前が、空港名に付与されています。

 

その偉人とは、有人の航空機で音速超えの初飛行を成し遂げた、航空界のパイオニア(昨年12月に、お亡くなりになりました)、チャック・イェーガー氏。
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1947年10月14日、ロケットエンジンを搭載したベルX–1号にて、人類として初の超音速有人飛行に成功しました。

 

イェーガー氏が搭乗していたのは、X–1、46–062号機。
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写真に写っているのは、在りし日のイェーガー氏ご本人と、46–062号機。機体は現在は、首都ワシントンにある国立航空宇宙博物館に展示されています。

 

小高い丘に立つウェストバージニア州の中でも、さらにちょっと高い丘に位置する、チャック・イェーガー空港。
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この写真のうち、現在運用されているのは、横方向に伸びる滑走路5/23のみで、交差する滑走路は既に閉鎖されています。滑走路5/23の全長は2,000メートルと、旅客航空会社が就航している空港としては、やや短め…

 

両側が崖の上に立っているので、オーバーランは忽ち大事故につながります。しかも北東方向へ向かって着陸する時は、着地後かなり下り坂になっているので、着地目標点に着地させることは絶対条件。
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しかも昨日は雨が降っている中での着陸でしたので、特に正確な着地が必要な状態でした。

 

離着陸時のジェット機の速度は、風速、風向の状態にも左右されますが、平均的には230キロ。ほぼ新幹線並みの速度。雨が降っていて滑走路に水が浮いていたりすると減速も思うようにならずに、着陸滑走距離も伸びてしまいます。そんな時に役立つのがこちら…

 

旅客機が就航するアメリカの空港の多くで採用されている、排水溝。アメリカでは、グルーブと呼ばれています。

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滑走路にコンクリートアスファルトを敷き詰めた後に、機械で均等に切れ目を入れていきます。
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高速道路でも時々見かけますが、目的は同じ。水捌けをよくして、タイヤのグリップを保つこと。
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激しい降雨のあとに、排水溝が敷かれたところとアスファルトのままのところでは、水捌けに大きな違いがあるのがよく分かります。
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今回のチャールストンチャック・イェーガー空港でも、この排水溝があったおかげで、着地後の減速には問題なし…

 

ただし目標地点へと向かって正確に着地させることだけを考えていたので、着地時はけっこうな衝撃……

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恐らく乗っていらっしゃった51名の乗客の皆様にとっては、こんな感じだったことでしょう…

 

シートベルトをしていなかったとしたら、機内はこんな感じになっていたかも知れません…
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しかも着時後は、かなりの下り坂でしたので、ブレーキペダルも床まで踏みつけるようなブレーキング…

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乗っていた方にとっては、こんな感覚だったかも知れません…
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でも滑走路上で、ちゃんと減速することの方が、もっと大事…

 

チャールストンまで搭乗される方は、空港の立地をご存知の方も多いようで、
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飛行機を降りて行く際には、たくさんのお褒めの言葉をいただきました。

 

 

皮肉も込められとったんやろか……

 


この5日勤務では、裕坊にとって本当に久しぶりとなる、オクラホマシティオクラホマ州)への往復便なんかも入っていました。

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到着時の、操縦席から見えるターミナルの様子。

 

増築が行われていて、輪郭が出来上がっているのがよく見えます。
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コロナ禍の影響か、それとも新築になったばかりで、これからテナントを募集するのかは分かりませんでしたが、
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フードコートで営業をしているお店は一軒もなし……

 

営業していたのは、レストランのみ…
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そしてオクラホマシティと聞いて、パイロットが思い浮かべるのが、連邦航空局の事務所。

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航空局の本部自体は首都ワシントンにありますが、それに次ぐ大きさを誇る事務局で、ライト兄弟の写真が掲載されたパイロットライセンスなども、こちらから送られてくることが多いです。

 

ちなみに、ここオクラホマ事業所の大きな役目は、航空管制官の養成所であるFAAアカデミーが設置されていること。

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競争率が高い試験を勝ち抜いて、一度FAAアカデミーまでやってくると、航空管制官としての基礎をここで教わっているそうです。
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航空機の動きを知った上で、

 

レーダーを見ながら、航空機同士の間隔を保つ訓練…
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ジェット機ですと、巡航中は時速が900キロにも及びますので、研ぎ澄まされた感覚を磨く必要があります。この方たちのおかげで、旅客機が安全に運航できることに、心から感謝感謝です。

 

 

 

日曜日が4日目で、夕方から2便を担当です。