Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊、お休み(7月13日)

アメリカの小型旅客機の操縦担当、裕坊と申します。こんにちは。

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3日間のフライトを終えて、先週土曜日に帰宅しました。アメリカの航空会社は、ユナイテッド航空アメリカン航空ではそれまで空席にしていた3人がけの真ん中座席も販売する方針にしたそうですが、サウスウエスト航空デルタ航空が管轄する旅客便は、7月13日現在も定員を減らしての運航が続いています。

 

裕坊が乗務するリージョナルジェット機の客席数は76で、現在の定員は42名。もし家族で同乗し、隣の座席に着席するパターンは例外扱い、ただそれでも絶対上限は44。44名の方が搭乗したものとして、本来の定員からすると搭乗率は55%。

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航空会社にとっての損益分岐点は、平均的にはおよそ搭乗率換算で60%と言われているので、仮に今の定員ギリギリまでお客さんが搭乗してきても、今は利益があるかどうか……

 

ちなみに、各便とも出発前には入念な消毒作業をやっています。噴霧剤を使って消毒をし、客席全体に霧がかかったような状態になるので、
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いつの間にかその作業のことを、霧吹き(Fogging)と呼ぶようになりました。その作業が加わるので、裕坊の乗るリージョナルジェット機だと今までの最短の折り返しは35分だったのが、現在の最短は55分となっています。先日は木曜日から土曜日までで合計6便を担当。1便平均ではおよそ32名の搭乗でした。

 

デトロイト空港での最近の空港内の様子。開店しているお店やレストランの割合は約半分ほど。レストランでも座席に座っての飲食も可能になっています。
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ターミナル内でのマスクの着用率は、およそ9割ほど。今はアメリカは航空会社だけでなく、多くの空港でもマスク着用が義務づけになりました。

 

マスクの着用が政治問題にまでなってしまうアメリカ……

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ここに来てマスク着用をめぐって推進派と否定派の衝突はヒートアップ。マスクをしない人たちの多くは保守層。そのほとんどは共和党支持者。「マスクをしない権利と自由」を振りかざし、「病気になって医療を受けるかどうかの決断をするのは、私たち自身だ」と仰います。お医者さんや看護師さん、お気の毒です………中には拳銃まで取り出し脅しをかける人たちも現れて、ニュースの一面を飾ったりすることも……

 

そういったわけで、町のスーパーや空港内などでも、マスクをしていない人を見かけた時の周りの反応といえば「腫れ物を触るような気分」………フロリダ州などでも、レストランの全面解禁とともに、「マスク否定派」の方たちは、競うようにレストランへとお出かけしておりました………

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こういった方たちの中には、コロナウィルスそのものが「デマ」だと信じる方もいるようで……

 

テキサス州の「コロナパーティー」に参加していたという30代の男性も、そんな人のうちの1人。どうやら『COVID−19』を本気で「作り話」と信じていたらしく、コロナウィルスに感染していた人をパーティーに招待し、お金をかけてまで「誰が1番先に感染するか」を競っていたといいますから、正気の沙汰とは思えません……

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アメリカでは普段からジム通いするなどして、体を鍛えている人が多いので、自らは若く、無敵で、感染などするはずがない、という思い込みがあったようです。残念なことに、その30代の男性、先日テキサス州サンアントニオの病院で亡くなってしまいました……

 

既に規制緩和とともに、新規の陽性者が劇的に増え始め、特にヒューストンでの医療体制が逼迫しつつあるテキサス州共和党知事の中にあっても比較的穏健なことで知られるアボット知事も、背に腹は変えられなかったのでしょう。
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州全体が超保守で知られるテキサス州全州で、マスク着用が義務化されました。また反対派が町に繰り出してくるんやろな……


ただマスクを拒否する人に対する批判の声は日増しに高くなっていて、明らかに「マスクしない派」の肩身は、アメリカでも狭くなりつつあるように思います。

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写真は、マイアミ市長のフランシス・スアレス氏。共和党の市長さんですが、この方もマスク推進派。この方の提言はとても的を得ていて、分かりやすいです。

 

「マスクを公の場で着用するのは、車に乗る時シートベルトをするのと同じことだ」。

 

 

先日はとうとう「マスク拒否派の旗振り役」だったトランプ大統領も、首都近郊にある米軍病院の訪問の際に、マスクを着用するに至りました。「元々マスクに反対はしていなかった」と、ちょっと苦しい弁明をしてはいましたが……
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今年の11月はアメリカの大統領選挙戦。民主党寄りの報道機関が多いアメリカでは、バイデン氏が大きくトランプ大統領を大きくリードしているとされていますが、共和党の支持基盤は想像以上に盤石。ただその共和党支持層でもマスク着用率は上がっているのでしょう。支持基盤に恐らく綻びが見られるようになって、戦略を変えざるを得なかったことは、容易に想像がつきます。

 

ミシガン州でも今日月曜日の午後になって、州条例によりレストランやスーパー、ショッピングモールなどの屋内、あるいは屋外でも人が密集しやすい場所におけるマスクの着用が義務付けられるようになりました。

 

公の場では比較的中立な立場を取る、アメリカの連邦準備銀行

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その連銀のダラス地区のカプラン総裁ですら、今日はマスクに言及。「景気回復の加速化に向け現時点でできる最も重要なことは、市民全員がマスクを着用することだ」とはっきり明言しています。「経済的な成長加速と規則遵守との間には、直接的な関連性がある」と述べていました。

 

 

経済の再開が本格化して、客足は徐々に戻りつつある、アメリカの航空業界。それでもフロリダ州テキサス州で入院患者が増え、既に集中治療室が満杯になる病院も増えつつある中で、今後の先行きが今一つ不透明なアメリカの航空需要。

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我が社の8月度のスケジュールを見ている限りでは、客足がさらに戻ることを前提にしたようになっています。裕坊が勤める航空会社では、現在8月度の個人スケジュールの希望の入札期間で、締め切りは明日14日。

 

4月、5月度は極端な減便措置に応じて、乗務員の半分以上を自宅待機させる措置を取っていましたが、8月度は乗務員全体のうち7割が担当便が確定した通常のスケジュールで、残り3割がスタンバイシフトと、平常時と変わらないパターンへと戻りました。そして乗務員のほとんどが、1ヶ月ほぼ丸々スタンバイシフトになっていたニューヨークでも、来月8月からは旅客便の担当が入ることになっています。

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ただニューヨークからの出発便自体は、まだ数えるほど……ケネディ空港からニューヨーク州バッファロー、カナダのトロント、シカゴ・オヘア行きなどが入ったくらいで、スケジュールのパターンを見ると、一旦ケネディ空港を出発すると、最後の日までアトランタデトロイトミネアポリスを行ったり来たり……

 

 

あとは現在組んでいる旅客便が予定通り運航されるのかどうか………ひょっとすると、4月や5月の時と同様、需要減とともに直前で欠航、ということもあるかも知れません……

 

今後のことは、神のみぞ知る、です……