Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊、3連休の2日目

旅客航空会社の下請け版、リージョナル航空会社に勤める、裕坊と申します。こんにちは。

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先週は火曜日から6日間連続のフライトをこなし、月曜日からちょっと連休をいただいている裕坊。

 

その月曜日は息子くんの検査の日。週末は音楽会に急遽出ることになったりして、その間睡眠のパターンを崩していたのか、声はガラガラ……

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急な音楽会が入ったりなどで、宿題もかなり後手後手になっていたようですが、親が言うのもなんですが、まぁよう頑張っとる……

 

ミシガン州、特にデトロイト近郊は日本人の数も多く、病院も日本人の先生だったり、日本人通訳の方がいらっしゃったり……
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息子くんが幼少の頃から、本当にここのクリニックにはよくお世話になっています……血圧などを測定し終わって、主治医の先生を待っている間に、何気にインターネットを見ていたら………

 

アメリカのリージョナル航空会社に、ちょっとした動きが………

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トランスステイツ航空という名のリージョナル航空会社の、今年いっぱいでの運航停止の発表…………リージョナル航空会社とは、大手航空会社本体の機体では座席供給数が過剰になる路線に、小型機を投入することで路線の補完をする役割を担う、下請けの航空会社のこと。日本ですと、日本航空向けのフライトを賄う日本エアコミューターのような存在だと思っていただけると、分かりやすいでしょうか。

 

米国内のリージョナル航空会社は、多発同時テロ(9・11)、リーマンショックによる世界不況などの影響をモロに受け、長年劣悪な条件での運航を余儀なくされてきました。パイロットを夢見ていた人たちも、劣悪な労働条件の実態を知って、パイロットへの夢を躊躇するようになります。パイロットへのなり手が一時は激減。その余波がここに来て業界全体を直撃するようになり、リージョナルの世界では、どこもパイロットがやや不足がち………そんな背景がありますから、リージョナル航空会社は、裕坊が就職した頃と比較すると、当時では考えられなかったほど門戸が広げられるようになっています。会社によっては、外国人に就業ビザ(H1−B)のサポートをするところまで………

 

当然旅客航空業界への就職を目指すパイロットたちにとってみても、より条件がいいところを選べるようになりました。セールスポイントが少なかったトランスステイツ航空は、最近ではリージョナル航空業界の中では、やや埋もれた存在になっていて……社内で発表になった文書も、人材の不足が顕著になっていることが、ハッキリと記されていたそうです。残念な結果となりました……

 

 

元々トランスステイツ航空は、リゾート・エアとして立ち上げられ、その後すぐトランスワールド航空の補完的役割をするトランスワールド・エクスプレスとして、ミズーリ州セントルイスを中心に、中西部の中小都市を補完する役目を担ったそうです。
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ただ残念なことに、大きな契約先であったトランスワールド航空は、3度の破綻を経験するなど、経営は不安定。
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1992年、1995年と立て続けに、連邦裁判所に連邦破産法11条(日本での民事再生法に相当)を申請。2001年には3度目の破産法を申請するに至り、最終的には管財人の役目を果たしたアメリカン航空に全て吸収されるに至って、トランスワールド航空は完全に消滅。アメリカン航空は、その後トランスワールド航空が保有していた、主要基幹空港の大幅縮小整理を断行することになり、トランスワールド・エクスプレスの運航の主要空港として機能していたセントルイス空港も、その縮小整理の対象になります。

 

主要契約先であったトランスワールド航空の不安定ぶりを見るにつけ、トランスワールド・エクスプレス航空は、生き残りをかけて、既に対策を講じていました。1989年には現在のトランスステイツ航空と社名を変え、1989年にはUSエアウェイズ(現在のアメリカン航空)との業務提携を取り付けたり、

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1995年にはユナイテッド航空との業務契約も締結。
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USエアウェイズアメリカン航空との合併後は、アメリカン航空の補完的な役割を担った時期もありました。
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ただリージョナル航空会社の経営は、2000年代はどこもかなり逼迫。各大手航空会社は、一定規模の運航数を、最小コストで運航できるリージョナル航空会社を募るようになります。

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英語でRace to the Bottom、日本語で言う最劣悪労働条件への争いの火蓋が切られ、アメリカ政府が定める貧困層にも相当するお給料しか確保できないパイロットが続出する事態になり、パイロットを目指す若い人たちの足が、一時はかなり遠のく事態になりました………

 

それが顕在化したのが2010年代に入ってから。リージョナル航空会社のパイロット不足が顕著になり、リージョナル各社はパイロットを集めるための様々な手立てを企てます。我がエンデバー航空では大幅昇給。他でも会社によっては、給料はやや抑えつつも、大手航空会社への就職を約束したりするなど、あの手この手を駆使して、大々的にパイロットを募集。採用時のボーナスを供給したり、紹介状を書いた社員にボーナスを支給したりなど、手段も様々………

 

そんな中にあって、トランスステイツ航空は、経営母体となったトランスステイツ・ホールディングスが、一社別の航空会社を立ち上げていたり(2004年創設のゴージェット航空)、

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デルタ航空から、かつてノースウエスト航空の傘下として運航されていた航空会社を買収したり(コンパス航空)、

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経営的な余裕がなかったトランスステイツ航空は、パイロットを惹きつける条件を引き出せず、最近ではリージョナル航空界にあって、完全に埋没した存在になっていました………現在では、トランスステイツ航空の契約先は、ユナイテッド航空だけになっていて、協議の結果、ゴージェット航空に運航を集約させる形になり、トランスステイツ航空の運航は今年いっぱいにて終了、という結論に至ったようです。大変残念な結果となってしまいました。

 

 

航空会社とは、景気の影響を真っ先に受けやすく、大手、リージョナルを問わず、何が起こるか分からない世界。裕坊が幼少の頃は、アメリカのフラッグシップキャリアとしての栄華を謳歌したパン・アメリカン航空ですら、吹き飛んでしまうことがあるという世界。その思いを痛感させられた1日でした。裕坊にとっても、他人事ではありません……

 

 

3連休最後となる水曜日は、深夜から雪の予報。デトロイト地区の学校は、既に軒並み休校になっています。