Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊、お休み中

アメリカの地方路線を中心に、小型旅客機を操る裕坊といいます。こんにちは。

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先日5日間のフライト(実際には1日丸々担当便がない、宿泊滞在日がありましたので、実質は4日間のフライトでしたが…)を先週金曜日に終えて、3連休。普段ですと3日以上の連休がある場合、休日を返上してのお小遣い稼ぎを目論むのですが、今月初めには風邪でダウンしたりなど、ちょっと小休止モード。

 

ということで、今回は丸々3日間ともお休みをいただいております…………

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そんな中、今日1月26日、元NBA選手で、ロサンゼルス・レイカーズ一筋21年のスーパースター、コービー・ブライアント氏が亡くなってしまいましたね……

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ヘリコプターが墜落してしまったのだとか……

 

ブライアント氏といえば、現役時代はバスケットボールの神様とまで言われたマイケル・ジョーダン氏と常に比較され続けたほどのスーパースター。21年間の現役時代に18度もNBAのオールスターに選出され、そのうち4度、オールスターでMVPを獲得。極めて高い確率でゴールを決めるその確実性から、狙った獲物を99%の確率で仕留めるという、最も危険な毒蛇の一種である「ブラックマンバ」の異名まで持っていたのだそうですね……本当に惜しい事故になってしまいました。

 

今回の墜落事故の事故原因調査はまだ始まったばかりですので、詳細は待たなければいけませんが、事故当時はかなり霧が濃い状態だったようですね。

 

 

霧による航空機事故で思い出すのは、1977年3月27日に起きたテネリフェ空港でのジャンボジェット機ボーイング747型機)同士による衝突事故。


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この時も霧がかなり濃い状態で、滑走路の先はおろか、数百メートル先を見据えるのですらやっとの状態。

 

そんな中でKLMオランダ航空のジャンボ機は、まだ離陸許可を受けていないにもかかわらず、離陸を開始。まだ滑走路上に残ったまま誘導路へと退避しようとしていたパン・アメリカン航空のジャンボ機に衝突………

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実をいうと離陸前に、とある「承認」はされていたKLMオランダ航空便だったのですが、それは「飛行経路の『承認』」であって、離陸を「許可」するものではなかったのですが、英語では「Cleared」という同じ単語がそれぞれの場面で使われるが故に、確認ミスが起きてしまったのです……

 

この時は、近くの空港がテロ予告のために閉鎖され、予期せず小さな空港に大挙して大型機が飛来し、そこへ濃霧というもう一つの要素が加わることになるという、まさに雪だるま方式で事象が重なってもいました……もし当日の天候がよく、視界も良くて遠く先まで飛行機が見通せていたとしたら、KLMオランダ航空機の離陸もなかったことでしょう。

 

 

霧が深くなり視界不良になると、我々旅客機のパイロットにとっては、様々なことを考慮しておく必要が出てきます。

 

例えば空港レイアウトの把握……

 

視界不良時ですと、空港管制塔からは飛行機の往来を目視で確認することなどできなくなりますから、ある一定の取り決め事項を作成して、それを各パイロットに通達しておく必要があります。そんな時に使われるのが、視界不良時専用の空港のレイアウト図。

 

例として、メリーランド州にあるボルチモア空港の場合、通常ですとこういったレイアウト図が使用されますが……

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これには滑走路の位置と方角、全長などが記載されていて、通常ですとこのレイアウト図で間に合いますが…

 

視界不良時に使用されるのが、こちら………見た目にはほとんど同じようにも見えますが……

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よく違いを探してみると、例えば各滑走路や各誘導路に中心線灯の有無が記載されていたり、特定の誘導路の進行方向の制限などが記載されているのに、お気づきいただけると思います。

 

着陸時も、視界が極端に悪い場合には、通常とはちょっと違う操縦手順で着陸することになります。少々雲底(雲の高さで、1番低い部分を指します)が低い場合でも、ある程度の視界が確保できている場合には、1人のパイロットが全て操縦を担当して着陸まで漕ぎ着けるのですが、視界が一定以下になると、視界不良時のみ適用になる操作手順で着陸をすることになり、

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この時は2人のパイロットが交互に操縦を担当。我が社では副操縦士が一定の高度までの降下を担当、滑走路が目視で確認できた時に機長が操縦桿を握って、着陸………

 

霧の中を降下して、滑走路が視認できた時のパイロットの目線といえば、こんな感じ………

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水蒸気が漂っているのが目視で見えるくらいですので、滑走路がやっとのことで視認できた時の視界はというと、本当に朧げ………やっと滑走路が見えたという表現が正にピッタリで、着陸後は誘導路を確認するのに四苦八苦なんてこともザラ……誘導路には、中心線に黄色のペイントが敷かれているのですが、目を凝らしながらゆっくりゆっくりと黄色い線を頼りにターミナルまで到着したなんてこともありました……

 

危険を伴う濃霧時の航空機運航、もし仮にヘリコプターによる移動ではなく、車を使っての移動だったとしたら、と考えると大変無念……ブライアント氏のご冥福を、心からお祈りします。

 

 

ところで、老朽化した旅客ターミナルの全面建て替え工事が進む、ラガーディア空港。昨年11月に一部供用が開始になりましたが、

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第2期工事の概略の予定が決まって、

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黄色い部分が、閉鎖になるそうです。ただ以前のように、バスにて搭乗便までご案内、ということはないようですので、ご安心を………