米国航空会社に勤める裕坊です。
以前勤めていた地域航空会社から、親会社である航空会社へと選択転籍して2年。他機種への移行の選択権も手中にしながらも、今も入社時と同じボーイング717型機に乗務しています。
元々はマクドネル・ダグラス社が手掛けたDC-9型機の派生型。胴体後方にエンジンが据えられます。垂直尾翼は尾翼の最上部に取り付けられ、Tの形をしていることからこの型の旅客機はティーテイル(T Tail)などと称されるのですが、この形の旅客機は本当に数が激減しました。
運用の関係から、丸1日担当便が入らない30時間の宿泊滞在が入ることも多く、今もニューヨークを訪れてはマンハッタンにほぼ毎月出没しています。
先月3月はブロードウェイのミュージカルを見学。
今月にはセントラルパークへと訪れる機会もあり、
園内は桜が満開で、ちょうど見ごろでした…
息子くんが今は大学1年生。学費捻出のために、最近はニューヨークにいても、道路に停まっているフードトラックからの食事で夕食を済ませてしまうことも…
そんな中、最近入ってきたニュースといえば、
ユナイテッド航空で、一時帰休(無給での休暇)の社内募集が始まったこと…
ボーイング737-MAXがここ最近の不具合の発生に伴って、連邦航空局による全機の運航停止命令が発令されたのですが…
元々ボーイング社との結びつきが強固なユナイテッド航空では、その煽りをもろに被る形となっていました。
160機超にも及ぶ737-MAXの運航停止による損失は、なんと第一四半期だけで2億ドル(日本円でおよそ300億円)を計上…
それだけでなく、300機以上の発注をしているMAXの納入もしばらく見込めなくなるとあって、当面の減便は避けられず…
必然的に乗務員も余剰になるとあって、採用は停止。それでもまだ余剰が出る見込みで、社内から無給での休暇を募集するに至ったということのようです。
2024年4月末現在ではまだ737-MAXの保有機はない我が社デルタ航空ですが、それでも影響がゼロというわけにはいかないのが現実…
この夏は会社史上でも最大旅客数を見込んでいるようなのですが、100機超のマックスの納入遅れが必至になるとあって、デルタでも新規採用はかなりペースダウンすることになりました。
保有機材でやり繰りをしながら、この夏を凌ぐという算段…
B717も使用可能な機材は最大限、前線へと送り込む日が続いています。
そんなある日のこと…こんなことがありました。
ボーイング社の旅客機組み立てラインが旅客ターミナルからすぐ南にあり、
完成したて、或いは点検整備待ちの機体などが、旅客ターミナルに隣接する駐機場に停泊しているのがよく見えます。
そしてチャールストン空港のもう1つの顔というのが、
米空軍基地の1つであること…
全米じゅうに空軍基地が配されるアメリカでも、米空軍が民間旅客機による就航がある空港と共有するのは稀なのですが、実はチャールストン空港はその稀有な存在の1つ。
旅客ターミナルが空港南側にあるのに対し、空軍基地は空港北西部に位置しています。
ただ戦闘機の保有は少なく、停泊しているのはほとんどが大型貨物機で、
その主流は別名グローブマスターという愛称を持つ、C−17貨物機になっています。
大型貨物機のため、駐機場も広いのが特徴。
その駐機場を利用して年に1度、航空ショーも開催されます。
普段はなかなかお目にかかることがない自家用ジェット機だけでなく、
軍用機の公開もあり、
直接戦闘機の操縦席などまで見学することも可能です。
飛行機好きの見学者にとっては夢の1日。航空ショー当日には、戦闘機や複葉機などを使ったアクロバット飛行なども開催されるのですが、
安全を期するためにアクロバット飛行中は空港は全面閉鎖され、例え旅客機といえども一切の発着ができなくなるのです…
実はよりにもよって航空ショー当日にデトロイトからの往復便を担当していた裕坊…会社からの飛行計画書にも、現地時刻で12時から1時半の間、空港閉鎖になる旨の記載がなされておりました…
当日のデトロイトからのチャールストン到着予定時刻は11時3分。
チャールストン空港には、10時45分ごろ着陸していたにも関わらず、アトランタ行き出発便の遅延が影響して、すぐには到着ゲートへと着くことができず…
到着は予定から7分遅れての11時10分…
残り50分…(ちなみに、B717は平均的に折り返しには55分を要します)
既に本社運航管理課では、定刻よりも早い出発時刻へと変更をしてくれていました。
両便ともほぼ満席だったにもかかわらず、30分ほどでお客様のお見送りからデトロイト行きの搭乗まで全て完了し、出発体制に入ったのは良かったものの…
荷物の搬入が始まったのが、なんと搭乗完了後…
結局、出発は本来の定刻(11時53分)からですら3分遅れることになりました…(実際の出発が11時56分)
設計が古いB717は、片側のエンジンの立ち上げに1分半を要するため、どうやっても12時の離陸には間に合わない…
機内には、完全に諦めの空気が漂いました…
しかしこの手の催し物とは、常に予定の前後左右が付きもの…
実際に航空管制では、航空ショー主催者との協議をしてくれていたらしく…
12時5分ごろになって、
「デルタ2376便、今から数分間の空きが出るそうだが、3分以内に離陸できるか?」
いつでも離陸できるように、両側ともエンジンは立ち上がったままにしておいたので、
問題なし…
12時10分離陸…
離陸滑走が始まると同時に、客席から拍手が起こったのは言うまでもありません。
それでいながらデトロイトには、定刻よりも数分早い到着でした。
今後は月1度で投稿を続けていきます。次回は5月にお目にかかります。