Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊、帰宅

アメリカの国内線専門に、小型旅客機に乗る、裕坊と申します。こんにちは。

f:id:Yuichibow:20200821054348j:image

今週月曜日から始まっていた3日間のフライト。3日間合計で担当したのは、4便だけ。最終日の昨日水曜日は、ウィスコンシン州の州都、マディソンからデトロイトまで1便だけ。

 

本当に雲一つない快晴のお天気のマディソン市。96,000本もの木が植樹されている都市とあって、青々とした木が多く、街の景観に彩りを添えていました。

f:id:Yuichibow:20200820152833j:image

 

午前10時前の出勤とあって、空港入り口付近はガラガラ…
f:id:Yuichibow:20200820152818j:image

地方都市では、最近でこそ早朝こそそれなりの数の旅行客を見るようになったものの、まだ需要は弱含み……

 

昨日は空港管制塔が背後に聳えているのが見える出発ゲートから、38名のお客様をお迎えしての出発となりました。
f:id:Yuichibow:20200820152829j:image

 

50分ほどでデトロイトに到着して、任務終了だったのですが……
f:id:Yuichibow:20200820152824j:image

 

月曜日に3日間のフライトが始まる時に目にしていたのと同じ赤いお札を置いて、家路に着くことに……
f:id:Yuichibow:20200820152815j:image

コロナウィルスの影響で旅客便数が少なくなっているとはいえ、小型機の離着陸回数も頻度も、太平洋や大西洋をひとっ飛びするような大型機に比べるとどうしても遥かに多くなるので、その分細かい部品の故障は増えてしまいます……

 

故障があったのは、前面ガラスの加熱装置。車にも備えられているデフロスターと、基本的に役目は同じ。

f:id:Yuichibow:20200821015925j:image

視界を確保するための、ガラスの曇りや霜などを除去するのが主な目的。上空は夏のこの時期でも35,000フィート、およそ10,000メートルまで上昇してくると、外気温はマイナス50度という、到底人間が過ごせる環境にはないくらいに温度が下がるので、曇り除去装置は高高度を飛行するジェット機には欠かせない装置のうちの一つです。

 

ただ夏の暑いこの時期であれば、一旦下降を始めると大気の温度も上がって、仮に窓ガラスに着氷があっても着陸する頃にはしっかりと溶けてしまっているので、問題になることはほとんどないです。逆に冬は外気と機内の温度差も大きくなり、雲の中に入った途端に着氷することもあるので、ガラスの加熱装置の重要性は増してきます。

 

仕組みは、最近の車であれば大抵標準装備になっている、後面ガラスに貼り付けられたデフロスターとほとんど同じ。

f:id:Yuichibow:20200821050526j:image

 

エンジンの回転を利用して作られた電気を利用して熱を作り出して、その熱でガラスを温める仕組み。構造自体は至って単純。

f:id:Yuichibow:20200821045709j:image
f:id:Yuichibow:20200821045713j:image

ジェットエンジンが作り出す回転エネルギーのおかげで、大きな容量の発電も可能なので、ジェット旅客機の場合は、前面ガラス、側面ガラス、全てに加熱装置が取り付けられています。

 

ちなみに訓練用の小型機などの場合は、エンジンの出力が乗用車とほとんど変わらないので、単発のセスナなどになると、窓ガラスの加熱装置が付いていない機体も多いです。双発機にもなると装備される飛行機もありますが、装備されていても小さくなる傾向があり、

f:id:Yuichibow:20200821053255j:image

小さな窓ガラスだけが温められて、視界を確保することも少なくありません。

 

ジェット機の場合は、風圧に耐えられるように、ガラスは大抵いくつかの層からできているので、その間の層に熱を送り込む仕組みになっていることがほとんど。

f:id:Yuichibow:20200821050718j:image

 

ちなみに紫色で囲まれているのが、エアバス350型機の加熱装置。
f:id:Yuichibow:20200821045706j:image

 

裕坊が乗っているCRJシリーズの場合は、ガラスの上の方に装置が付けられているのが見えます。

f:id:Yuichibow:20200821020601j:image

これは機長席側の前面ガラス。右上に小さく電熱装置が取り付けられてます。この写真は、除氷作業で除氷液がかかった状態で、ガラスが濡れた状態になっていますが、

 

霜がビッシリと張っていたり、ガラスが曇ったりしている時でも、加熱装置を作動させて10分も経つと、けっこう外はよく見えるようになってきます。

f:id:Yuichibow:20200821051243j:image

これは副操縦士側の側面のガラス。こちらも装置はガラスの上の方の取り付け。
f:id:Yuichibow:20200821020605j:image

 

副操縦士側、前面ガラス。
f:id:Yuichibow:20200821020608j:image

この写真は、昨年の春先に撮った写真。ちょっと曇りがかかっていたのですが、加熱装置を作動させて20分くらいで、きれいに視界が保てるようになっていました。

 

離陸、着陸時、あるいは地上で飛行機を滑走路から、あるいは滑走路まで移動させるときは、前面ガラスに備え付けのワイパーも作動できます。速度が遅いときは、雨を全部は弾いてはくれないので、ワイパーを動かして視界を確保。着陸時にも雨天の時には、滑走路に近づいてきた時には大抵作動させます。

f:id:Yuichibow:20200821051851j:image

ただし離陸時は、速度が上がるにつれて、風圧で雨を吹き飛ばしてくれるので、離陸滑走を始めた段階でワイパーは止めてしまうことがほとんど……

 

ちなみに大抵の旅客機では、側面ガラスが開けられる仕組みになっていて、こんな風に窓拭きをすることも可能……
f:id:Yuichibow:20200821051844j:image

 

軍用機にもなると視界を確保できないとなると、任務遂行どころではなくなってしまうので、おそらく出発前に入念に窓拭きをされていることでしょう。

f:id:Yuichibow:20200821053548j:image

 

夏の時期は、虫がガラスにへばりついて視界を遮ることがあるので、側面からガラスが拭けるのはありがたい……
f:id:Yuichibow:20200821051855j:image

はず………

 

ところが、実はCRJシリーズは、側面のガラスといえども開かない仕組みになっているので、
f:id:Yuichibow:20200821051848j:image

虫などがたくさんへばりついている時には、地上の係員に応援を頼んで、外から拭き上げてもらいます。係員が脚立に乗って窓拭きの作業をしてくれることもありますが、普段は長い肢がついたモップで拭いてくれるところがほとんど。人の手が見えず、モップだけがガラスを行ったり来たりするので、ショーでも見ているかのような錯覚に陥ります…

 

昨日は整備員が駆けつけてくれたところで、整備記録を渡して、3日ぶりの帰宅。

f:id:Yuichibow:20200821054614j:image

 

ターミナル内は比較的人で賑わっていたのですが、まだまだこんな風に閑散とした光景に出くわします。
f:id:Yuichibow:20200821054617j:image

需要回復までには、まだまだ長い道のり……

 

昨日は我が息子に急に入った音楽会の練習にお付き合い。

f:id:Yuichibow:20200820152124j:image

ここ最近デトロイト近郊でも増えている環状交差点が、大の苦手な愛妻ちゃんの運転のお手伝い。この環状交差点、事故軽減にはかなり役立っているそうですので、これからどんどん数は増える傾向にあるようです。

 

 

息子が急にテニスを始めると言い出して、てんてこまいの愛妻ちゃん。思いがけず長年勤めたお仕事を退職することになったのですが、忙しいのは相変わらずのようです。