Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

裕坊、4日間のフライトへ出発

アメリカの定期航空会社で小型機に乗っている、裕坊と申します。こんにちは。

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今月は先月に続いて、業界で『リザーブ』と呼ばれる欠員補充要員を務めています。旅客機は必要な乗務員の誰1人が欠けても、運航をすることができなくなるので、急な病欠などに備えて、会社もスタンバイ要員を待機させておかなくてはいけません。普段は乗務員全体のおよそ2割ほどを待機させるのですが、需要減に伴って、ほぼ半数の乗務員が今月は「リザーブ」を務めています。

 

リザーブ」とは早い話が便利屋さん。野球の中における「ユーティリティープレーヤー」。会社からすると人員が足りない時に動かせる「貴重な駒」。アトランタへ行けと言われれば、言われるがままにアトランタへと向かい、ニューヨークへ行けと言われれば、ブツクサ言いながらもニューヨークへと飛び、デトロイトの空港内で5時間待機してろと言われれば、大人しく………………心の中では解放してくれ、と叫びつつも…………………もとい、大人しくフライトが入るのを待ちます。

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先月の前半などは電話が全く鳴る様子がなかったのは、先月の後半に入って、ずっとフライトが入りっぱなし。今月は結果的に、平常時と比べても、かなり忙しい月となってしまいました……

 

 

だからといって、アメリカの航空需要が劇的に回復しているわけでは、全くありません。徐々に回復してきているとはいっても、本来なら繁忙期のはずのこの時期ですら、去年と比べるといい日で3割ほどの需要……しかもかなり見切り発車的な要素が強い、現在の回復状況……ここ最近フロリダやアリゾナ州、テキサスなどでの感染拡大が続いていますので、需要が再び落ち込む可能性は十分にあります。回復しつつあるとはいっても、まだまだ流動的。航空会社も、まだ博打を打つ段階ではありません……

 

 

裕坊が乗っているのは、定員76名のリージョナルジェット機。感染拡大防止の措置として上限を44名にしての運航を続けているのですが、その44名の定員というのが、現在の緩慢な需要にちょうど合っている、というだけのことなのです……

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親会社であるデルタ航空の今年2月6日の運航便数が3,203便だったのに対し、7月16日の実績は1,283便。2月と比べると運航数はほぼ4割。対して我が社は2月6日の運航数906に対して、7月16日の実績は531便。2月と比べて、ほぼ6割の運航数。

 

乗客数の詳細の対比こそ発表にはなっていないものの、単純計算で行くと、現在の運航便数が平常時のおよそ4割前後で、定員を客席数の6割程度に抑えているので、需要は平常時と比べると多い時で3割程度でしょうか。現在の航空需要とリージョナルジェット機の定員が、かなり合致しているのは、容易に想像できます。 ですので、我が航空会社が忙しいからといって、航空需要は大きく改善はしているということではありません……

 

 

「リージョナル航空部門」だからといって、必ずしも安泰なわけでもなく、既にコロナ禍をきっかけに会社が閉鎖になったところもあります……

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リージョナル航空会社は、大手航空会社が直接子会社として保有する一部の例外を除くと、ほとんどが大手航空会社と契約を締結した上で、旅客便を担当するのが、アメリカの航空業界の実態。不景気の中では、リージョナル航空会社といえども整理の対象になることがあり、2社があえなく閉鎖することになってしまいました……

 

たまたま需要が増えている「大手航空会社傘下のリージョナル航空会社」という環境の中で、裕坊自身は、ささやかな幸運を掴んでいるだけに過ぎません……

 

 

デルタ航空の財務状況は、3月中旬の感染拡大初期の頃は、需要が蒸発したといっていいくらいに壊滅的な状況となって、赤字額は1日あたり1億ドル(日本円でおよそ110億円)という異常事態にまで陥りました。様々な手段を講じて、1日あたりの赤字額は減少はしたものの、未だに損益分岐点ですら復帰できていないのが現状……そのため一部古くなっていた機材を前倒しで退役。

 

マクドネルダグラスシリーズの機体は、完全に姿を消しましたし、

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デルタ航空の機材の中でも、17,000キロという最長不倒の航続距離を誇るボーイング777型機ですら、全機引退が決まりました。
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他の航空会社でも、燃料効率の悪い機材の退役が進められているようです。今まで大型旅客機の中の代表的な存在だった、ボーイング747型機なども、最近では置き換えの対象になってきています。別名を「空の女王」とまで呼ばれて、一躍その存在感を示してきましたが、最新鋭の双発機と比べると燃費効率で劣ることは否めず、どの航空会社でも置き換えが進んではおりました。コロナ禍以前にも、燃費のいい最新鋭の双発機を導入して、多くの航空会社ではボーイング747型機の退役済み……

 

日本航空からも、

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全日空からも姿は消していましたし、
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デルタ航空と合併前のノースウエスト航空
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デトロイト空港における存在感は、一際高かったです。

 

デルタ航空との合併後も、7年ほど活躍を続けました。
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現在はほぼ全機、アリゾナ州のマラナ空港の駐機場で、保存状態に置かれています。

 

そしてイギリスを代表する航空会社、ブリティッシュエアウェイズからも全機の退役が決まったそうです。
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コロナウィルスの感染拡大初期では、保有する31機のうち、5機だけを前倒しして退役させることを固めたらしいのですが、需要の回復が今後数年期待できないことから、結局全機が退役することになりました。4発エンジンの旅客機から次々に燃費のいい最新型の双発機に、各航空会社とも置き換えが進められています。

 

 

他にも、早期退職制度の募集などにも着手していますし、一時解雇の可能性があることも示唆しています。既に一時解雇の対象になる可能性がある社員に対しては、通知なども既に送付されました。

 

 

 

今後、航空業界どう推移していくのか…………

 

 

 

裕坊には、さっぱり分かりません………

 

 

 

とりあえず、今できるフライトをこなして、指示された場所へと飛ぶだけ、しばらくこの形で今月一杯乗り切ることになりそうです……

 

 

今日はちょっと変則な形でミネアポリス入りして、最後もう一本を担当。

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ミネアポリス空港では、アップル製品をたくさん陳列したお店が、久しぶりに再開になっていたのに……
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今日はコンコース間を結ぶターミナル内の電車が運休しているという摩訶不思議……
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今日はウィスコンシン州グリーンベイまでやってきています。
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