皆さんこんにちは、「ちょっと疲れた」パイロット、裕坊です。
ここ最近は、水曜日から土曜日までのフライトが定期的に入れられるようになった裕坊。アメリカの航空会社では、ほぼ例外なく社歴が長い順に自らのスケジュール選択権を得られるのですが、従業員の入退社の入れ替わりが激しいリージョナル航空会社にもなると、社歴が13年も経つと、選択順位は大抵どこでも上位になります。
その理由は………………
お給料が安くて、皆、特に若い方たちは、こぞってお給料が倍以上になる大手や、サウスウエスト航空などの条件のいいところへと移籍してしまうから……
裕坊が現在の会社に入社したのは、2006年6月19日。その時に研修を始めたのは、裕坊を含めて24名……
そのうち、今も在籍するのは、裕坊を含めて3名だけ。残りはデルタ航空、アメリカン航空、フェデックス航空(貨物専用)などの大手に、ほとんどが移籍してしまいました……
裕坊は、というと…………
既に今年の5月で50台到達……航空会社の定期便パイロットは、65歳が強制引退の年齢になりますので、残りどんなに健康に過ごしたとしても、エアラインのパイロットとして働けるのは、あと14年と8ヶ月。
元々薬剤師の免許を取得し、5年間勤めた製薬会社を退社して、紆余曲折を経ながらも、ここまでの地位に辿り着きましたので、裕坊的にはやりきった感でいっぱい。
ですから、リージョナル航空会社のパイロットとして引退しても、全く悔いはありません。
ただまだ20代、30代のパイロットたちともなると、話は別…………
リージョナル航空会社とは、基本的には、大手の航空会社(デルタを初め、アメリカン、ユナイテッドなど)の地方路線を補完する下請け。
数十年前までは、その主力はプロペラ機でしたが、
最近ではほとんどがジェット機。
会社の契約によって、お給料はピンキリですが、リージョナル航空会社の世界ですと、最高の金額のお給料がもらえるところでも、大手と比較すると、やっぱり半分以下。平均的には3分の1。入社したての副操縦士ともなると、自らのお給料だけでは、生活できない時期が実際長く続きました……(裕坊も入社した当時は、年間のお給料が日本円で150万円ほどという時代が、3年ほど続き、親の仕送りに頼った時期もあったんです……)
それに引き換え、大手ですと、現在の水準で計算すると、1年目はリージョナルにやや毛が生えた程度に止まるところもありますが、2年目のお給料は、平均で日本円換算で800万円ほど。3年目以降はうなぎ登り……そしていざ機長に昇格すると、平均で2000万円代に到達するそうです。頑張って飛び続けると、5000万円代到達なんてことも…
そんな金額、一度でいいから見てみたい……
ですから、20代、30代の若手のパイロットたちにとって、リージョナル航空会社で一定の経験を積んだ後、一刻も早く大手に移籍できるかどうか、というのは死活問題……
ここ最近の航空旅客数の伸びに対して、パイロットの供給が少し不足している影響で、世界的にみると、パイロットはどこも不足気味。特にアジア、中東圏におけるパイロット不足は深刻なようです。実はアメリカ国内でも、リージョナル航空では、パイロットの数がやや不足気味…
このままのペースでいくと、大手といえども、パイロット不足の時期は、来ないとは限らない……ということで、先手を打ったのがアメリカン航空。
元々アメリカン航空は、1社のリージョナル航空会社を100%出資の子会社として抱えていたのですが(アンボイ航空、かつてのアメリカンイーグル航空)
さらにもう2社(PSA航空(写真上)、ピードモント航空(写真下))を傘下に収め、
アメリカン航空のパイロット需要に応じて、面接なしでアメリカン航空本体へ移籍ができるプログラム(フローと呼ばれます)を数年ほど前に開始。
アメリカン航空に移籍するまでの期間は、マーケティングの影響をかなり受けますから、一概には言えませんが、平均的には8年ほどだそうです。真面目にリージョナル航空会社のパイロットとして、安全に飛び続ければ、必ず大手のパイロットになれる時代が遂にやってきました。
似たようなプログラムはあるのですが、最大の違いは面接を受けなければならないこと。そして面接における合格率は、平均で55%ほどにとどまっているそうです。
基本的には同じ仕事をしてるのに、しかもデルタの看板を背負っているのに…………???
しかも面接で不合格になると、またエンデバー航空へと戻ってきて、それでいてデルタ航空の看板を背負って、デルタ航空のチケットを手にしているお客様を運ぶという現実……
裕坊も、ここの部分は、全く納得していません……
プロ意識を持って、毎日デルタ航空のチケットを買ったお客様を運んでいるのに、なんで大方のパイロットを採用してくれないのか、という疑問は、以前から多くのエンデバー航空のパイロットの間で燻っていて……
その声を聞いたパイロットの代表が立ち上げたのが、こちら……
オレンジ色のランヤードを身につけて、我々の訴えを吸い上げてもらうというキャンペーン。ランヤード一つで、どこまでの効果が見込めるかは、もちろん未知数……
ただ、我々エンデバー航空は、デルタ航空の補完的な役割を、安全第一に、それでいて早朝から深夜まで全力でこなしているのだから、我々の要望も是非聞いてほしい、という、若手たちの悲痛なまでの願いがこめられています。
アメリカン航空の直接傘下のリージョナル航空会社には、既に大手への道が開かれているのだから、我々にも同じような機会を与えてほしい、という若手たちの思いが詰まった、ランヤード。
今月末からキャンペーンを開始。大手の航空会社の半分以下のお給料でありながらも、将来を見据えて、真面目に安全第一でのフライトをこなしているパイロットたちを、少しでも応援していただければ、と思います。裕坊も、しばらくは、このランヤードを身につけ、大手を目指す若手をサポートしたい、と考えています。
裕坊は、今朝は5時過ぎに空港へとショーアップ。
苦手な早朝のパターンでしたが、ニューヨークの往復を大きな遅延もなく到着して、
今日も飛行機の階段を使って、荷物を降ろし……
階段を上がって、ボーディングブリッジへと上がりました。
やっとモントリオール到着……
今日はサンドイッチを買って、少しカロリー補給……
明日も3時台起きです……