皆さんこんにちは、リージョナル航空サラリーマン、裕坊です。
皆さま、大変長らくお待たせしてしまいました。
今日、予定より遥かに長くかかる訓練を終えて、やっとミネアポリスからデトロイトまで帰ってまいりました。
長かった………………
一旦デトロイトまで帰っては来たものの、そのあともう一度ミネアポリスへと出直し。さすがにここ数ヶ月間、フライトからちょっと遠ざかっていた影響が出てしまい、何度も操縦をやり直しているうちに、時間切れ………………
訓練し直しで、一週間も伸びてしまうことに………
ただ、今回のほぼ10日間に渡る訓練、学ぶことは多かったです。
今回特に念を置いて勉強したのが、最近アメリカの航空業界において取り入れられている、『Threat and Error Management』というコンセプト。日本語に訳すと『危険因子、そしてそれに連鎖するミスの管理』というニュアンスで、受け取っていただけると思います。
ここでいう『危険因子』とは、「航空機の運航、並びに管理をより複雑にしてしまうもの」と定義されます。基本的には「外的要因」で、パイロットが自ら管理することができないものが対象。
通常であれば、一定項目を確認して、通常の操縦手順をこなしさえすれば、出発から到着まで安全にこなせるところ、『危険因子』があると、こなす必要がある業務量は増えることになります。
それは例えば、
夏であれば積乱雲、
冬場であれば、雪や氷などのお天気だったり、
飛行機の故障発生だったり、
或いは出発地、到着地の混雑だったり、
こんな時は、出発前の業務が増えることに……
離陸後でも、到着地の混雑が激しくて、滑走路に十分な空きがない場合は、航空管制によって上空待機が課せられたり、
こんな時は、燃料の残量を計算した上で、目的地に到着できるのか、或いは代替空港へとダイバートの必要があるかを確認する必要が出てきます。
上空でも飛行機の故障は、時として発生します。発電機の故障くらいであれば、対処は難しくはありませんが、
もしそれが、エンジンの上空における破損や損壊だったり、
エンジン火災だったりしたら、
こんな緊急用のチェックリストで、飛行機の上空での故障に対処。
故障の具合が激しく、目的地到着が好ましくない場合は、近くの空港へ緊急着陸の必要が出てきます。
こういった『危険因子』が関わってくると通常よりも業務量は断然増えますから、どうしても確認項目が抜けたり、本来こなさなければならない項目を、うっかり飛ばすなどの『連鎖するミス』を犯しやすくなります。
そのミスがいくつも重なると、
最悪の場合、飛行機を最も避けなければならない、誰しもが求めない状態へと導いてしまうことに(undesired aircraft state)
『誰もが望まない状態の航空機』とはその名の通り、誰もが望まない状態ですから、まずはその状態に航空機を導かないこと、もしその状態に陥ってしまったら、そこから航空機を『安全な状態』へと戻す必要が出てきます。
『危険因子』は基本的にパイロットは管理することはできませんから、それに対処する方法を練らなければいけません。
機長1人で対処するには限界がありますし、『ミス』をする確率が増えますから、
まずはそれに対処できる『チーム』を構成して、対処法を練ります。
その『チーム』を構成するのは、
本社の運航管理課であったり、
整備課であったり、
航空管制であったり、
客室乗務員だって、客室内の緊急事態では、大活躍。
上空にいる場合、燃料が無限にあるわけではありませんから、時間に限りもありますから、それを意識しながら、
それでも決して、1人で何もかもを請け負うとはせず、
こなすべき業務の役割分担をはっきりとさせることも大切。
副操縦士が操縦桿を握っている間、機長がチェックリストをこなしたり、
本社の運航管理課や整備課と連絡を取ったり、
航空管制から情報を得たりしながら、
各部署が、それぞれの分野のエキスパートの部分で、情報を提供。それが滑車のように機能すると、
最終的な各部門が納得できる最善の結論を導き出されるようになり、(Aeronautical Decision Making)
飛行機を安全な状態へと導くことができるようになるのです。
この『Threat and Error management』、『危険因子、そしてそれに連鎖するミスの管理』のコンセプトを、この一週間でかなり整理することができたのは、裕坊自身にとっても収穫でした。
ただ一週間、ほとんどミネアポリスにずっと止まりっぱなし。本当に長かったです…………
明日と明後日は、ちょっとお休みです。