Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

特定の夜間飛行パターンについて、取り上げました。

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

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9月6日未明に北海道を襲った大地震が引き起こした道全体を巻き込んだ大規模停電。実は近畿地方でも台風21号が引き金となった停電が起きていたのですね。恥ずかしながら今日になって初めて知ることになりました。あまりにも広範囲に及んだ自然災害の情報が溢れ過ぎて、同じような影響があったことを知るに至りませんでした。

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最大219万戸にまで及んだ近畿地方での停電、9月8日現在ではかなりの範囲で復旧はしているようですが、今回の停電は強烈な風で飛んできた屋根や倒木が電柱や電線に当たり、機能を失う現象で起きたものだそうです。そのため今でも約3万戸の復旧の目処が立っていないのだとか………

関西電力によると、和歌山県京都府の山間部で、現場に向かう作業員が倒木や倒壊した電柱があって立ち入れない状態になっているのだそうです。

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そしてこの大規模停電の影響で、停電範囲を送配電の状況から自動的に把握する関電のシステムにまで障害が起きてしまう結末に。数日に渡って影響を受けられた皆さん方は、本当に待ち遠しかったことと思います。関電関連の作業員の皆さん方の電力回復への尽力ぶりにも頭が下がるばかりです。

 

その台風21号の影響を大きく受けていた関西空港、被害が少なかった第2ターミナルとB滑走路を使って一部国内線、国際線の運航が再開になっていますね。関西空港の運営会社では、4週間以内には連絡橋も復旧させたいとのことだそうです。

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まだ復旧作業が進む真っ只中、またしても西日本を中心に雨雲が発達して陸地へと進んでいるようですね。もう裕坊的には自然災害は十分だと思うのですが、自然の猛威はまだまだ容赦がありません………

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9月9日午後6時までの24時間に予想される予想雨量が、四国地方の多いところでは300ミリを超えると発表になっています。九州・中国地方で150ミリ、北陸で130ミリ、近畿でも120ミリ………近畿地方ではさらに9月9日以降の降水量が100ミリから150ミリ、北陸では100ミリから200ミリとなっています。土砂災害、低い土地での浸水、河川の氾濫、増水にはまだまだ警戒が必要です。特に台風21号の被災エリアでは災害の再発や拡大に警戒が必要です。自治体からの避難情報にも注意するなど、事前準備を皆さんお願いします。

 

そんな中、我がリージョナル航空会社ではちょっとした動きがありました。今までリージョナル航空会社の間では常々行われていた夜間を挟んだフライトの廃止されることに……………

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主要空港の最終便で目的地へと向かい、翌朝早朝の始発便で主要空港へと戻ってくるこの運航パターン、スタンドアップと呼んだりハイスピードと呼んだり、呼称は航空会社によってまちまちでしたが、実はこれホテルの宿泊費を節約するためにリージョナル航空会社間では常々行われていました。これを我が社では9月30日付で、全面廃止することになったのです。

具体例を見つけることができたので、ちょっと上げてみました。

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これはJFK、ニューヨーク・ケネディ空港からPWM、メイン州ポートランドまでの夜間飛行。9月18日の夜9時35分発でケネディ空港からポートランドへと向かいます。到着予定は深夜午後11時4分。

翌朝はポートランドからケネディ空港へと始発便を運航。出発予定時刻は6時。前の晩夜11時4分到着予定になっていますから、到底法律上必要とされる10時間の宿泊滞在をすることはできません。

ところがケネディ空港には夜8時50分に空港へとショーアップ。翌朝の復路便を担当してケネディ空港へは7時19分には戻ってきますから、予定通りフライトが済めば、ゲート到着から15分後の7時34分には全ての任務も終わってしまうのです。合計の拘束時間は10時間29分。その後に休憩に入りさえすれば、このパターンを繰り返してもいい、というのがリージョナル航空会社のスタンスで、これは連邦航空法上も全くの合法でした。

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しかしこれは、ホテル宿泊費と対比してフライトクルーの人件費がかなり低かったからこそメリットが大きかった運航パターン。マクドナルドのアルバイトとほぼ同水準のお給料で、特に副操縦士は生活設計にかなり苦労していた時代のお話。人材難でリージョナル航空会社といえどもお給料の水準が飛躍的に上がり、ホテル宿泊費を節約するメリットは確実に少なくなっていました。

さらにこの運航パターンは、フライトクルーの稼働率を必然的にかなり押し下げることになります。昼間に休息を取ることを前提にしたフライトパターンですから、当然担当できる便は限られ、運航可能な時間数も限られることになります。もっと言うなら、始発便の飛行機で不具合が起こったり、航空管制による遅延がかけられたりすると、時間切れになって必然的に早朝始発の便が欠航を強いられることに。デメリットがあまりに大きくなりすぎて、結果的に我が社もこの運航パターンの全面廃止を決定することになりました。

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一部では家族とともに過ごせる時間が増えるなど、メリットを感じていたクルーがいたのは事実ですが、夜間の睡眠がほとんど取れないですし、明らかに時代遅れ。リージョナル航空会社の間では常日頃行われていたこの夜間飛行。これも航空史の1ページへと刻まれることになりました。

 

裕坊、明日から5日間のフライトへとお出かけです。