Yuichibow’s diary

リージョナルジェット機の操縦席から外を眺めるお仕事をする人の日記

9.11テロから17年が経ちました

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

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今日はアメリ同時多発テロ、通称9.11から17年の日。アメリカ人にとっても航空業界に携わる者にとっても、あるいは全世界の人たちにとっても忘れられない1日です。ニューヨークのワールドトレードセンターにおけるビル崩壊は今も脳裏に焼き付いて、離れることがありません。

あの日は航空機4機に乗っていた方、ビルにいて崩壊に巻き込まれた方、消化活動、救助活動へと出ていて命を落とした方などを含めて、3,000人以上の方が犠牲になりました。改めて犠牲になった方には、心からお悔やみを申し上げます。

この9.11の影響はまだ終わっていません。世界貿易センターヘルスプログラムでは、この世界貿易センターの崩壊による影響を受けた方々を初めとして、テロによる影響を受けた方々の健康状態のモニタリング、さらには治療の提供を行なっています。2010年12月の連邦議会によって法制化され、前大統領のオバマ氏の署名によって正式に機関として成立しました。2015年12月には改訂が加えられ、モニタリングだけでなく治療を行う機関としても機能するようになっています。

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それによると登録者数の数が現在ほぼ90,000人に登っていて、そのうち癌に罹患していると診断された方の数が、ほぼ10,000人にも登るのだそうです。既に癌で亡くなった方が420人。癌の原因と考えられているのが、ビル崩壊により生じた有害ダスト。粉砕されたコンクリートに萌えたジェット燃料、焼けたコンピューターやその他様々な機器類が混じり、おびただしい量の粉塵がビルの崩壊とともに撒き散らされました。

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世界貿易センターヘルスプログラムのマイケル・クレイン医師によると、17年が経過した今でも1週間あたり15件から20件の照会があり、世界貿易センターヘルスプログラムに登録した方は、一般の方に比べると癌に罹患する確率が最大で30%も高くなっているのだそうです。なかなか表立った疾患がすぐには現れず、有害物質にさらされることによる癌の発症には時間がかかるそうなのですが、甲状腺癌や皮膚癌に罹患する率が高く、膀胱癌になるリスクも高いのだとか………他にも乳癌、リンパ腫、白血病などの確率も非常に高くなっているようです。

当日救助活動に当たっていた消防士も、多くが有害ダストが原因とされる癌に罹患しています。テロ以降亡くなった182人のうち、100人以上は癌が原因。そのうちの1人、ウィリアム・ゴームリー消防士。かなりの粉塵に巻き込まれながらも、その日は無事に帰宅。その後グランドゼロと呼ばれる世界貿易センター崩壊後の瓦礫の中で、多くの救命活動に携わりました。まだ粉塵の影響が残る中での救命活動、確実にゴームリー消防士の体を蝕み、つい先日膀胱癌によって帰らぬ人となりました。享年53歳だったそうです。

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クレイン医師によると、この粉塵の影響を受けた方達は今後喘息など、呼吸器系の疾患を患い、何年も経過した後癌を発症することになるだろう、と話しています。ここ最近急激に9.11の生存者が癌を発症している背景には、この有害ダストが大きく関わっている可能性が高いそうです。ただ癌を発症しているのは15パーセントにも満たず、まだ初期段階なのだとか。今後の経過に注意を払う必要がありそうですね……。

 

また登録者の中には癌の疾患だけでなく、心的外傷後ストレス障害PTSD)に苦しんでいる方も大勢いらっしゃるようです。その中のニューヨーク市警の登録者は、署内のカウンセラーに相談することなく、苦しみながらも心が壊れるまで働き、遂には自殺に追い込まれてしまった人もいるのだとか……第一線の現場の仕事を外され、デスクワークなどへの配置転換を恐れて相談できず、1人で抱え込んでしまっている方が多いのだそうです。

 

まだまだ9.11の残した爪痕は大きく、大勢の方がそれと闘っています。9.11はまだ終わっていません…。

 

裕坊

裕坊、2日目

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

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度重なる台風に豪雨、さらには北海道においては地震など自然災害が絶えない日本列島。その災害からの復旧を目指して頑張る方々には頭が下がるばかりです。

アメリカでも東海岸にハリケーン・フローレンスがやってきていて、特にノースカロライナ州からバージニア州にかけてが大きな影響を受けそうな気配になってきました。

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そんな中、裕坊は昨日から5日間のフライトへと出かけて今日が2日目。アメリカのホテルは掛け布団が申し訳程度のものが多く、あまりグッスリとは日本人的には寝られないのですが、昨夜のホテルは日本の旅館並みに厚めの掛け布団。おかげでしばらくぶりにホテルでグッスリと寝られて、まずまずの寝覚め………こんなんいつ以来やろ?……………

無料の朝食までついてきて………

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こんな感じの内容をお皿に取り、
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コーヒーメーカーの機械でも、いろいろ種類が選べるので、今日はあえてカフェラテをいただきます。
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幸い今日はアトランタで若干積乱雲を見ることはあったものの、大きく裕坊の担当した4便のフライトにはほとんど影響がなく、無事2日目を終えることができました。

裕坊自身が自分でお金をはたいて泊まるにはあまりにも高級すぎるホテルを出発。

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雲一つない快晴の空の元を空港まで20分ほどのドライブ。
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今日はどこまで行っても快晴。外の気温も20度くらいと絶好のフライト日和。我が社でも東海岸を運航していたクルーが大きく遅延に巻き込まれる中、今日の裕坊は本当に幸運でした。

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デモイン空港には、ホテルを出発して20分ほどで到着。
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快晴の下を出発して、まずはエンデバー航空の本社がある、ミネソタ州ミネアポリスまで。こちらもすこぶるいいお天気。
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そしてそこからやってきたのが、ミネアポリスから直線距離でわずか130キロほど南へと下ったミネソタ州・ローチェスター。以前50人乗りのCRJの200型機を担当しているときはよく訪れていた都市なのですが、900型機に移ってからは初めて。ほぼ4年ぶりにやってきました。

旅客ターミナルは規模も小さく、平屋建てでボーディングブリッジがあるゲートも数えるほど。

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大きな主要空港ともなると、貨物専用機が止まる駐機場は大抵旅客ターミナルからだと、滑走路を隔てた遠くの位置に設置されているのですが、ここだとフェデックスの機体がすぐ近くに拝むことができます。
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やってくるのはほとんどがリージョナルジェット機。朝一、夜の最終便にもなると大手の航空会社が100人乗りの機体で飛んでくることもありますが、日中はほぼ例外なく50人乗り、もしくは70人乗りの小さな機体ばかり。アメリカン航空もこのブラジル製のエンブラエル145型機でシカゴからやってきます。
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そしてこちらが空港の航空管制塔。大きな建物も障害物もなく、視界を遮るものが何もないので、こんなに低い管制塔でも十分機能してしまうのです。
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ミネアポリスからだと車でも1時間半ほどで行けてしまう距離なので、ほぼ直線で飛べる飛行機だとあっという間。今日の離陸から着陸までの飛行時間はわずか20分。普段だと距離の短い路線でもファーストクラスには大抵ドリンクサービスがあるのですが、今日はそのファーストクラスでさえ飛行中のドリンクサービスはなし。客室乗務員もこんなに短いフライトをこなしたのは初めての経験だったようで、目を丸くしていました。

今日はそのあとアトランタを経由して、

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途中アトランタ空港では、体重を少しばかり絞るべく、真面目にサラダをこのようなお店から買ったりして、

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またも短いフライトをこなして、2日目を終了しました。
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当たり前のように思っている日々の生活。いつその歯車が崩れてもおかしくない環境に我々は皆置かれている中、今まで当たり前に思っていた日常が過ごせたことに心から感謝です。

裕坊

季節の変わり目に注意です

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

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3日間のゆっくりの休養を取った上で、新たに5日間のフライトへと出発した裕坊。外の気温14度……

デトロイト地域では、3日ほど前までは夜でもほぼ30度超えするなどの真夏日、熱帯夜だったのが一気に気温が下がって、ここ数日は20度を超えない日が続いています。本格的な秋の訪れ…………

この時期は曇り空の日が圧倒的に多くなり、今朝もどんより曇り空……………

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空港ターミナルへと向かう従業員駐車場からのシャトルバスの中も、心なしか淀んだ空気が漂っていました…………
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そんな中、今日は3便を担当。まずはデトロイトを出発し、
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やってきたのがアイオワ州のデモイン。
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一旦ミネアポリスまでやってきて飛行機を乗り換え………
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またもデモインへと到着。乗客の皆さんをお見送りして、自らのカバンを取り出します。
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今日泊まっているのは、今まではリージョナル航空会社ではまずあり得なかった高級ホテル。
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ただ夕食をとる余裕は途中なかったので、持ってきていたお弁当は部屋に入ってからいただきます。
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幸いこちらアメリカではここのところ大きな自然災害がなく、特に中西部においてはそこそこお天気も安定して、ここ半年ほどは定時運航が続いています。

ただパイロットだけで飛行機は飛べるわけではありません。機内のお客様の安全を守る客室乗務員、飛行機を常に飛べる状態にしておくために常日頃から点検整備を頑張ってくれている整備員たち、お客様を空港に来た時からお出迎えするチェックインカウンターの係員、ゲートの係員、地上で荷物を飛行機から上げ下ろししたり飛行機のプッシュバックを担当してくれる地上の係員、燃料補給係、清掃員、飛行機の周りだけでも、これだけたくさんの方が飛行機の正常運航のために尽力されています。

空港の設備もフライトには必要不可欠。空港設備の安全点検から滑走路、誘導路の整備、電気、水道の供給と管理、あるいは航空管制などなど…………

今回の台風21号、西日本豪雨、北海道の地震では各地に大きな被害をもたらし、各インフラにも甚大な影響が出ました。未だに日常の生活に戻れない方が大勢いらっしゃいます。北海道胆振東部地震の影響で、9月10日現在、2次的な土砂災害を考慮して新たな避難指示が出たこともあり、未だに2,600人以上の方が避難生活を強いられているそうです。今日の裕坊のように3便を予定通り正常運航ができ、飛行機を飛ばせることに心から感謝をしなくてはいけません………

 

仕事柄どうしても空港関係のニュースに目が行ってしまいます。そんな中、関空では被害が大きかった第1ターミナルでも9月14日から暫定運用を始めることが決まったそうです。

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第1ターミナルとA滑走路がある一期島では、A滑走路が4日に冠水。

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こちら一期島では1994年9月4日の開港時から運用が始まっており、日本航空全日本空輸に限らず、世界の大手国際航空会社のほとんどは第1ターミナルに入っています。

既にピーチ・アビエーションなどLCCが利用する第2ターミナルでは9月9日の段階で通常の9割程度にまで便数が回復しているそうですが、いよいよ第1ターミナルでも地下施設の排水作業が峠を越えたことから、南側から暫定的に供用が再開することになりそうです。

ただ関西空港へのアクセスの大動脈である連絡橋は、現段階で全面復旧までにはおよそ4週間を見込まれるなど、本格的な修復作業はこれから………写真で見ても、鉄道桁が大きく押し込まれているのがよく分かります。
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ただ道路桁では、7日早朝から対面通行が出来るようになったようで、関空と対岸を結ぶ臨時シャトルバスも9月8日からJRと南海電鉄の「りんくうタウン駅」発着になったのだそうです。従来の泉佐野駅よりもバスを定時運航しやすくなっているようで、乗客の輸送には一定の目処が立ったようです。

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既に連絡橋との衝突事故への原因究明に向けた調査も始まっています。9月6日朝には、現場に自己調査官も派遣され、タンカー乗組員への聞き取りがあったのだそうです。

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原因特定には今しばらく時間はかかりそうですが、事故前に荒天時に海上保安庁から推奨されている関空島から最低5.5キロ離れた沖合ではなく、岸壁から南東約1.6キロで錨を下ろし停泊していて、その錨を下ろしたまま流される「走錨(そうびょう)」という現象が起こっていたそうです。

関空周辺で過去に走錨は既に多発していて、海上保安庁では最低5.5キロ、3マイル離れた場所に避難するよう注意喚起していて、今回の台風ではタンカーが衝突する直前、2度にわたって注意を受けていたことも明らかになったそうです。

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1時ごろに荷揚げを終えたタンカーが流されていることを海上保安庁の職員が確認。船舶電話で注意を呼びかけましたが、タンカーは流され続け、約10分後に連絡橋に衝突したということだそうです。

海上保安庁では、この海域にいた約50隻の船の中でなぜこのタンカーだけが流されたのか、これからの検証課題にするようです。

 

明日は少し朝ゆっくりした上で、4便を担当します。

 

裕坊

特定の夜間飛行パターンについて、取り上げました。

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

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9月6日未明に北海道を襲った大地震が引き起こした道全体を巻き込んだ大規模停電。実は近畿地方でも台風21号が引き金となった停電が起きていたのですね。恥ずかしながら今日になって初めて知ることになりました。あまりにも広範囲に及んだ自然災害の情報が溢れ過ぎて、同じような影響があったことを知るに至りませんでした。

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最大219万戸にまで及んだ近畿地方での停電、9月8日現在ではかなりの範囲で復旧はしているようですが、今回の停電は強烈な風で飛んできた屋根や倒木が電柱や電線に当たり、機能を失う現象で起きたものだそうです。そのため今でも約3万戸の復旧の目処が立っていないのだとか………

関西電力によると、和歌山県京都府の山間部で、現場に向かう作業員が倒木や倒壊した電柱があって立ち入れない状態になっているのだそうです。

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そしてこの大規模停電の影響で、停電範囲を送配電の状況から自動的に把握する関電のシステムにまで障害が起きてしまう結末に。数日に渡って影響を受けられた皆さん方は、本当に待ち遠しかったことと思います。関電関連の作業員の皆さん方の電力回復への尽力ぶりにも頭が下がるばかりです。

 

その台風21号の影響を大きく受けていた関西空港、被害が少なかった第2ターミナルとB滑走路を使って一部国内線、国際線の運航が再開になっていますね。関西空港の運営会社では、4週間以内には連絡橋も復旧させたいとのことだそうです。

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まだ復旧作業が進む真っ只中、またしても西日本を中心に雨雲が発達して陸地へと進んでいるようですね。もう裕坊的には自然災害は十分だと思うのですが、自然の猛威はまだまだ容赦がありません………

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9月9日午後6時までの24時間に予想される予想雨量が、四国地方の多いところでは300ミリを超えると発表になっています。九州・中国地方で150ミリ、北陸で130ミリ、近畿でも120ミリ………近畿地方ではさらに9月9日以降の降水量が100ミリから150ミリ、北陸では100ミリから200ミリとなっています。土砂災害、低い土地での浸水、河川の氾濫、増水にはまだまだ警戒が必要です。特に台風21号の被災エリアでは災害の再発や拡大に警戒が必要です。自治体からの避難情報にも注意するなど、事前準備を皆さんお願いします。

 

そんな中、我がリージョナル航空会社ではちょっとした動きがありました。今までリージョナル航空会社の間では常々行われていた夜間を挟んだフライトの廃止されることに……………

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主要空港の最終便で目的地へと向かい、翌朝早朝の始発便で主要空港へと戻ってくるこの運航パターン、スタンドアップと呼んだりハイスピードと呼んだり、呼称は航空会社によってまちまちでしたが、実はこれホテルの宿泊費を節約するためにリージョナル航空会社間では常々行われていました。これを我が社では9月30日付で、全面廃止することになったのです。

具体例を見つけることができたので、ちょっと上げてみました。

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これはJFK、ニューヨーク・ケネディ空港からPWM、メイン州ポートランドまでの夜間飛行。9月18日の夜9時35分発でケネディ空港からポートランドへと向かいます。到着予定は深夜午後11時4分。

翌朝はポートランドからケネディ空港へと始発便を運航。出発予定時刻は6時。前の晩夜11時4分到着予定になっていますから、到底法律上必要とされる10時間の宿泊滞在をすることはできません。

ところがケネディ空港には夜8時50分に空港へとショーアップ。翌朝の復路便を担当してケネディ空港へは7時19分には戻ってきますから、予定通りフライトが済めば、ゲート到着から15分後の7時34分には全ての任務も終わってしまうのです。合計の拘束時間は10時間29分。その後に休憩に入りさえすれば、このパターンを繰り返してもいい、というのがリージョナル航空会社のスタンスで、これは連邦航空法上も全くの合法でした。

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しかしこれは、ホテル宿泊費と対比してフライトクルーの人件費がかなり低かったからこそメリットが大きかった運航パターン。マクドナルドのアルバイトとほぼ同水準のお給料で、特に副操縦士は生活設計にかなり苦労していた時代のお話。人材難でリージョナル航空会社といえどもお給料の水準が飛躍的に上がり、ホテル宿泊費を節約するメリットは確実に少なくなっていました。

さらにこの運航パターンは、フライトクルーの稼働率を必然的にかなり押し下げることになります。昼間に休息を取ることを前提にしたフライトパターンですから、当然担当できる便は限られ、運航可能な時間数も限られることになります。もっと言うなら、始発便の飛行機で不具合が起こったり、航空管制による遅延がかけられたりすると、時間切れになって必然的に早朝始発の便が欠航を強いられることに。デメリットがあまりに大きくなりすぎて、結果的に我が社もこの運航パターンの全面廃止を決定することになりました。

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一部では家族とともに過ごせる時間が増えるなど、メリットを感じていたクルーがいたのは事実ですが、夜間の睡眠がほとんど取れないですし、明らかに時代遅れ。リージョナル航空会社の間では常日頃行われていたこの夜間飛行。これも航空史の1ページへと刻まれることになりました。

 

裕坊、明日から5日間のフライトへとお出かけです。

今年は自然災害が絶えないですね………

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

 

台風が過ぎ去り、近畿地方を初めとして、これからどうやって復旧していくのか、とニュースサイトをいろいろハシゴしていると、今度は北海道で全土が停電するほどの影響を及ぼした大規模地震……昨日になって最大震度が7だったと気象庁から発表になりました。震度7って……………どれほどの揺れなのか、想像もつかないです……………

地震後の停電……北海道最大の発電供給能力を有する苫東厚真火力発電所地震が起きた当時は、北海道全体の約半分を供給していたのだそうです。発電能力は165万キロワットで、北海道最大の火力発電所震源地に近い苫東厚真発電所、これが地震で止まってしまいました………

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電力供給能力が落ちても、電力需要は急には変わりません。ここで電力供給と需要のバランスが大きく崩れることになります。発電能力が苫東厚真に比べて低い他の各発電所では、設備への負荷やトラブルを避けるために、電気の供給を遮断する安全機能が一斉に動作し、それがドミノ倒しのように北海道各地へと伝染して、結果として広域で停電が起きるブラックアウトとなってしまったのだそうです。結果的に約295万戸で停電する事態となってしまいました。

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札幌市の西には泊原子力発電所もあり、ここの最大供給発電能力は苫東厚真発電所を上回る207万キロワット。但しこの発電所の重要施設の直下には断層が走っており、現在も原子力規制委員会の審査が続いていて、再稼働には至っていないのだそうです。またバックアップ用に本州から電気を受け取る「北本連系線」という送電線があるらしいのですが、元々こちらの連系線の送電能力は60万キロワット。さらに北海道側で受け取る直流を交流に変換するためには交流電源が必要であるにもかかわらず、それが停電により調達できなくなる事態に陥り、これも残念ながら機能しませんでした……

ただ9月7日午前6時現在で、約131万戸で停電が解消になっているという報道もあります。この停電がもし真冬の厳冬の真っ只中に起こっていたとしたら、まさに多くの方の生命を脅かす事態になるところでした。震度7を記録する地震でしたから、余震はしばらく続くでしょうから、予断は許さないでしょうが、一刻も早く日常生活を取り戻していただきたいです。

 

 

連絡橋に大型タンカーが衝突し、さらには一部でターミナル施設、滑走路が浸水、冠水したという関西空港。足止めされていた方たちは実際には8,000人もいらっしゃったのだそうですね。

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空港施設において被害が大きかったのは、どうやら一期島だったようです。第1滑走路に加え、ターミナル施設の電気設備も海水浸水による損傷のため、再開のめどが立っていないのだとか。

ただ幸い、大きな損傷がなかった第2ターミナルとB滑走路を使って9月7日には運航が一部再開になり、ピーチ・アビエーション那覇行き、仙台行きなど17便、日本航空でも羽田発着の2便が運航されるなど、3日ぶりに国内線運航が再開になっているようです。

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ただ関西空港と対岸を結ぶ連絡橋、タンカーが衝突した影響は裕坊が想像していた以上に大きいようですね。

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道路橋の道路(下り線)の橋桁がタンカー衝突によって数メートル押し込まれてしまったのだとか。その2.5メートル下にある線路、鉄道桁も道路桁とともに押し込まれ、約50センチ横ずれしたと見られているそうです。上下線2本のレールも歪み、架線も損傷しているのだとか………鉄道橋は新関西国際空港会社によって運営されているそうですが、同社によると「鉄道の再開には相当の時間がかかる」とのことだそうです。1日も早い復旧を願うばかりです。

 

ここ最近の台風と北海道の地震等で、すっかり話題にならなくなってしまった西日本豪雨の被災地域、鉄道の運行が少しずつ再開し、徐々にではありますが復旧の足跡を刻んでいます。

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山陽本線で普通になっていた柳井から下松、岩徳線の岩国から周防高森間は既に開通、周防高森から櫛ヶ浜間も9月中の再開の見込みとなりました。被害の大きかった芸備線福塩線呉線の一部は復旧にはまだしばらく時間がかかりそうですが、こちらも復興に続いて皆さん毎日頑張ってらっしゃいます。

 

裕坊は昨日から3連休。日曜日から5日間のフライトへとまた出かける予定です。

 

裕坊

裕坊、台風の被害に心が痛んでいます。

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

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今回の近畿地方を中心に大きな被害を出した台風21号。関西空港での最大瞬間風速が58メートルを記録するなど、その猛威は想像を遥かに超えてしまいました。新聞社のウェブサイト、ツイッターなどを見ていますと、想像を超える画像が次々に挙げられていますね。各地でお亡くなりになった方もいらっしゃったようです。改めて今回の台風で影響を受けた方々には、心からお見舞い申し上げます。

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関空では連絡橋に大型のタンカーが衝突して通行止になって関空が孤立してしまい、従業員の方2,000人を含む5,000人もの方が足止めになるなど、想定外のことまでが起こってしまいました。

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今回の関空連絡橋へのタンカー衝突事故に関していうと、未然に防げたのではという印象が残っただけにとても残念……どうやら関西空港を運営する関西エアポートからの要請で、1時半ごろには近畿地方に上陸するという予報が気象庁から出ていながら、12時過ぎまで作業をしていたようで、タンカーが沖合に出るには十分な時間的な余裕がなかったようです。

停電で空港内も大変暑くなっていたようですね。コンビニなどでの食料や飲料水などは売り切れが続出したようですが、10,000人の方が3日間を凌ぐことができる食料の備蓄はあったようです。関空においては命を脅かす事態にまではならなかったのが、せめてもの幸いでした……。その関空からは、船によって足止めの影響を受けていた方たちが次々と神戸へと運ばれているというニュースも耳にしました。足止めを受けていた方々、本当にお疲れのことだったと思います。

裕坊も6年前、ニューヨークの沿岸を襲ったハリケーン・サンディがニューヨークの各空港を水浸しにした時に、ニューヨークへと向かう便を運航できずに、しばらく足止めを受けた経験を受けたことがありました。

この時に影響が1番大きかったのはラガーディア空港。

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滑走路も完全に浸水し、復旧には数日がかかったのを覚えています。
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そんな中、裕坊は今日はひたすら穏やかな1日を過ごしました。今日は快晴で雲ひとつない中、シンシナティからボストンへの往復便を担当。
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ボストンに来ると必ず立ち寄ってしまうシーフードのお店で、クラムチャウダーとエビのサルサソースつきを購入。
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お昼過ぎには担当便も乗り終わって、ちょうど愛妻ちゃんと息子くんが帰って来るタイミングで帰宅……………
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日々の穏やかな日常が過ごせることに、心から感謝をしないといけないことを痛感する1日でした。今回の台風の影響を受けた方々に、少しでも早く日常が戻ることを心からお祈りしております。

 

明日は日帰りのフライト、4便を担当します。

 

裕坊

裕坊、ちょっとお天気のお話をしてみます。

皆さんこんにちは、航空会社フラリーマン裕坊です。

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異常に多い今年の台風、裕坊の頭の中では台風が本格的に活発になるのは8月中旬以降というイメージがありましたが、その既成概念を覆す今年の台風。今度は21号が大型の勢力で日本列島へと近づいているようですね。

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どうやら非常に強い勢力を保ったまま、今日のお昼前後に四国から紀伊半島へとかなり接近、上陸する見込みのようです。西日本、東日本で暴風、高波、大雨、高潮に厳重な警戒が必要と気象予報台から呼びかけています。皆さん、事前の準備、最新の台風情報などをしっかりとお願いします。避難の決断も早め早めでお願いします。

 

台風の定義とは、皆さんご存知の通り、北西太平洋で発生した熱帯低気圧のうち、最大風速が毎秒17メートル以上に発達したもの。海上で大きな湿気を巻き上げていますから、大量の雨ももたらしますし、力強い渦を巻くようになると風も強くなります。

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飛行機にとっても風速17メートル以上、航空業界で使われるノットに換算して34ノット以上もの風になると、さすがに技量に優れたパイロットといえども扱うのは困難になります。ですから台風、こちらでいうハリケーンが発生すると、影響のある地域を飛ぶフライトはほぼ例外なく欠航。

でももしそれが局地的なものだったとしたら………………

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上にあるような航空気象予報でよく使われるチャートとにらめっこしながら、予定通り運航するのか、それとも遅延してお天気が回復するのをしばらく待つのか、もしくは欠航するのかを決断します。そこで時々空港で皆さんにお目にかかるのが「天候調査中」の文字。

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飛行機にはそれぞれの機種によって、それぞれ運航可能な気象条件が細かく定められています。例えば風速であれば30ノット(15メートル)であるとか、横風であれば20ノット(10メートル)などなど。滑走路の路面にも影響は受けることになり、滑走路上で水滴が浮いていたり雪が残っていたりすると、さらにその条件は厳しくなります。

 

航空会社によって欠航をするのかそれとも予定通り運航をするのかの決定までの過程は様々。アメリカの航空会社では通常は運航管理課の責任者が気象情報を集めた上で、各機種ごとに定められた限界値と比較。限界値を超えていたり、あるいは運航可能な範囲内であってもマージンが少ないと判断された場合は、その日の運航管理課の責任者が決断を下して欠航が決まります。

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仮に安全上、運航に問題がない気象条件であっても、欠航が決まる場合もあります。アメリカの場合で見ると、ニューヨークやアトランタ、シカゴなどの離発着の多い空港ともなると、悪天候の影響によって航空管制が扱える便数がかなり限られてしまうので、離発着数を調整する目的で、地方空港を発着する座席数の少ないリージョナルジェット機が優先して欠航の対象になることに。

スケジュール通り運航するという決断が運航管理課で下された場合においても、最終判断は実際には機長の判断に委ねられることになります。ただ運航管理課で運航可能と判断された場合は、かなりのマージンが与えらることがほとんどなので、そこから機長の決断で欠航を運航管理課に申し出るというケースは実際には極めて稀。目的地の天候が微妙であっても、燃料がかなりの量搭載されて、目的地の空港に着陸できない場合でも、そこからかなり遠く離れた代替空港へと余裕を持ってたどり着くことが出来ます。

 

9月4日現在、既に暴風域に入る地域が出始め、鉄道の運転見合せ、航空便の欠航も出始めています。大きく被害が広がらないことを、アメリカから心よりお祈りしています。

 

裕坊